「本好きの下剋上」ドラマCDアフレコレポート【前 編】

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2019年某日、ドラマCD第三弾のアフレコに行きました。案内役の旦那に連れられて、鈴華さんと担当さんとの待ち合わせ場所へ向かいます。鈴華さんや担当さんと合流し、スタジオまでの道中に「今回は波野さんと、脚本の國澤さんが欠席です」と知らされました。アフレコレポ漫画2倍を期待していたのに残念です。むーん……。

スタジオに到着したら挨拶と名刺配り……とは言っても、鈴華さんだけ。私はアニメのアフレコに参加しているので、ほとんどのスタッフさんに挨拶を終えているのです。
ふふーん、今回は余裕……って思っていたら、鈴華さんの名刺が、コミックス「第一部 本がないなら作ればいい!」5巻の表紙イラスト!

「何ですか、それ? 私、もらってないですよ」
「え? いるんですか? もうちょっとしたら第二部のイラストで新しく作るからその時で良くないですか?」
「両方ください。だって、可愛いじゃないですか」

名刺交換が終わったら脚本が配られ、色紙プレゼントの段取りや集合写真を撮るタイミングなどについて話し合いがされます。スタッフさん達がバタバタと準備する中、私と鈴華さんは余計な手出しをせずに待機していました。

「まさかこんなキャストになると思わないじゃないですか。豪華すぎますよ」
「ですよね。今回は貴族院編なので、側近達がどんな感じになるのか楽しみです」

今回のドラマCDは貴族院二年生の入寮から始まり、ローデリヒの名捧げが中心のストーリーです。側近達の声がどんなふうになるのか楽しみでなりません。ハンネローレ&レオノーレ役の諸星すみれさんと、保護者三人組は後ほど収録になりました。皆様、本当に多忙な方々です。

「香月さんは保護者組が一番気になるでしょう?」
「年代的にジャストですからね。その中でも、よくこんなに集められたものだと感心しますよ。キャスト担当さんにビックリです」

フェルディナンド役が速水奨さん、ジルヴェスター役が井上和彦さん、カルステッド役が森川智之さん。担当さんに「今後の収録では絶対に誰かが揃わない形で収録になって、三人が一堂に会することはないだろう」と言われたメンバーです。

「香月さん、声優さんが集まったら挨拶していただいて良いですか?」
「良いですよ。でも、ローゼマイン役の井口裕香さんなんて、もう聞き飽きてると思いますけどね」

担当さんから挨拶については事前に聞いていたので、挨拶をするのは別に構わないのです。けれど、この時点でアニメの収録に主要キャラの声を確認するために二回参加し、その度に挨拶しています。つまり、井口さんは今日で三回目の「初めまして」を聴くことになるのです。

「そんなこと気にしなくて良いですよ。『初めまして』の人がほとんどなんですから。鈴華さんも一緒に」
「え? 私も挨拶するんですか!? 聞いてませんよ! それに、第四部って私は全然関わりがないんですけど」
「鈴華さんがレポ漫画を描くのに関わりないわけがないでしょう。『今回のアフレコレポ漫画を描きます』って言っておけば、ちゃんと挨拶っぽくなりますって」
「こちらで紹介するので、鈴華さんは『よろしくお願いします』くらいで大丈夫ですから」
「そんな簡単に言われても緊張しますよ!」

胃の辺りを押さえる鈴華さんに告げられるのは、スタッフさんの「全員揃いました」の声。おぉ、うぅ……と唸る鈴華さんと一緒にコントロールルームから声優さん達の揃ったブースへ移動しました。

「原作者の香月美夜です。アニメの収録で私の挨拶を何度か聞いている方もいらっしゃいますが、初めましての方がほとんどなので挨拶させていただきます。このドラマCDは第四部という中途半端なところなので、キャラがつかみにくいかもしれません。言いにくい台詞も多いですが、よろしくお願いします」
「第一部と第二部コミカライズを担当しています鈴華と申します。アフレコレポ漫画も描きますが、今日は1ファンとして楽しませていただきます」

軽く挨拶が終わった後、コントロールルームへ一旦戻ったのですが、質問タイムのために呼ばれて再びブースへ。ほら、『本好きの下剋上』ってちょっと独特な部分があるじゃないですか。「其方」「貴女」「養父様」「魔木」「貴色」などの漢字の読み方を始め、長いカタカナ名前のアクセントとか、台詞に込める心情など、他のスタッフさんでは回答しようがない質問が多いんですよね。

「呼ばれて飛び出てきました。質問ドーンと受け付けます」

質問は、ローデリヒ役の遠藤広之さんが一番多かったような気がします。ローデリヒは今回の準主役で台詞量も多いですからね。アフレコの時点ではまだ第四部Ⅵも書籍になっていないので、遠藤さんはweb版を丁寧に読んでくださったようです。

「脚本は『マティアス様』になっていますが、原作は『マティアス』だったのですが……」
「本になる時に『様』で統一するので、ここは脚本に合わせてください」

ローゼマイン役の井口裕香さんからの質問も多かったですね。「○○との」が連続していると指摘を受けて台詞を直したり、「一時」を「いっとき」と読むのか「いちじ」と読むのか尋ねられたり。

「あと、ここの祝詞はどんなふうに言えば良いですか? 戦いに向かうので力強い感じでしょうか?」
「叫ぶとかはしなくていいです。神様へのお祈りなので。あ、でも、武器の強化と癒しの儀式は差が欲しいですね」

個人的には井口さんが呪文のようにキャラ名を唱えて練習している様子が可愛かったです。長い名前を付けた私が和んでいる場合じゃないんですけど(笑)。

コルネリウス役の山下誠一郎さんからはローゼマインへの呼びかけが呼び捨てと「様」付きの二種類あることについて質問がありました。寮内の私的な場とそれ以外で変えるようにしているとか、襲撃を受けるなどコルネリウスが感情的になった時にはそれが乱れるなどのマイルールがあるのですが、この辺りは脚本に詳しく書けませんからね。

「それから、この部分ですが、コルネリウスがエスコート相手との関係をローゼマインに隠しているのは深い事情があるのでしょうか? 事情によってはここの台詞に深刻さが必要になるかと……」
「いいえ、全く。母親達が作っている恋バナ本のネタにされたくないってだけなので、本人達にはそこそこ深刻でも、特に深い事情はありません」

ヴィルフリート役の寺崎裕香さんは、今回旧ヴェローニカ派貴族の子の役もしてくださいます。

「こちらの旧ヴェローニカ派貴族の子ですが、男の子と女の子のどちらでしょう? 年齢もお伺いしていいですか?」
「えーと、ヴィルフリート達と走り回っているので男の子ですね。年齢は洗礼式から貴族院入学まで……7歳から10歳の間でお願いします」

シャルロッテ役の本渡楓さんからは報告書の読み方について。

「ここの『でも、お姉様も倒れました』はどんな感じが良いですか? 報告書なので淡々とした感じにするのか、心配を前面に出すのか……」
「感情はやや抑えめで、心配が伝わる感じが欲しいです」

ダームエル役の梅原裕一郎さんやハルトムート役の内田雄馬さんなど複数の方から質問があったのは、オルドナンツについて。

「ここ、オル『デ』ナンツになっていますが、オル『ド』ナンツが正しいですよね?」
「あれ? 私、前に脚本を確認した時に指摘したんですけど、修正されていませんね。オルドナンツが正しいです。……これ、他にも指摘が反映していないところがあるかも?」

配られた脚本はオル「デ」ナンツですが、音響監督さんが持っている脚本はオル「ド」ナンツだったそうです。どこでどう変わったのか、不思議。

そんな感じで今回は質問がたくさんありました。私も多少はお役に立てたと思います。まぁ、少々役に立たない答えもありましたが、そこはほら、必殺『丸投げ』! 今までのドラマCDやアニメの収録で見せてくれた声優さん達のスキルを見ていれば、何とかしてくれるだろうという経験則による信頼があるので問題なし。期待してます。



質問タイムが終了したら収録開始です。プロローグは保護者三人組の台詞が多くて後で収録なので、飛ばして1章へ進みます。軽くテストをして、キャラの声や脚本の台詞におかしいところがないかどうか確認しながら進めていく流れ自体は、今までのドラマCDと同じですね。

ただ、今回は脚本家の國澤さんが欠席です。キャラの年齢に合わせた声に、と細かく意見してくださっていた國澤さんがいないのですよ。
……ふおおぉぉ! 声と年齢が合っているかどうか誰が判断するの!? え? 私!?

「香月さん、ローゼマインは大丈夫ですよね? 私は違和感ないですけど」
「アニメのアフレコで聞いた、下町時代のマインに比べて年齢が上がっていて、貴族らしさが出ているので大丈夫です」

ローゼマイン役は井口裕香さん。井口さんは『アトリエの不思議シリーズ』のプラフタ役の演技がすごく印象的で、細かい差を出すのが上手いと思います。

「コルネリウスはどうですか?」

コルネリウス役は山下誠一郎さん。前回のドラマCDでコルネリウス役は女性声優さんだったのですが、「今回以降は完全に変声期後になるので男性声優さんで」とお願いしました。

「コルネリウスのファンはキュンとすると思います」
「いやいや、香月さん。声はOKですか?」
「私の要望通り成長したなぁって……」
「はい。じゃあ、OKということで」

ユーディット役はヴィルフリート役の寺崎裕香さんが演じ分けてくださいます。元気いっぱいという感じでイメージ通り。問題なしです。

「寺崎さんはヴィルフリート役なんですよね。ユーディットはこんなに可愛い声なのに、ヴィルフリートも同じ人なんて……」
「声優さんの声帯ってどうなってるんでしょうね」

それから、ローデリヒ役は遠藤広之さん。今回の準主役なので、声のイメージはとても重要です。特に何の問題もなかったのですが。

「ローデリヒも気弱でおどおどしていて立場の弱い感じがよく出ているので、私はローデリヒとしてピッタリだと思うんですけど……鈴華さんは年齢とか気になりますか?」
「脇役の貴族として埋没しそうな感じがすごくローデリヒっぽいですよね。私も問題ないと思いました」

貴族達が大集合する中で溺れそうになってわたわたしているローデリヒが思い浮かんで、ぷぷっ。思わず笑ってしまった鈴華さんの評価はともかく、ローデリヒというキャラにはぴったりですよね。

フィリーネ役は石見舞菜香さん。収録中に「可愛い!」と思わず声が上がるくらいに可愛い声でした。

「フィリーネは文句なく可愛いですね。バッチリです」
「めちゃくちゃ可愛いですけど、ハンネローレのイメージとかぶりません? ハンネローレが柔らかめ可愛い、レオノーレがキリッとした少女くらいですよね?」
「そうですね。ハンネローレはおっとり可愛くて、レオノーレは秘書っぽい感じです」

ハンネローレ&レオノーレ役の諸星すみれさんは別の日に収録されるとのことで、どんな感じになるのか、私も楽しみです。


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