香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD2アフレコレポート【後 編】
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エピローグはローゼマインとユストクスとフェルディナンドの会話です。前のシーンのしんみりとした感動が流れていきます。誰ですか、しんみりが続かない作品を書いたのは。
しかし、このシーンにはなんと前回のドラマCDに入らなかった「大変結構」が入っているのです。私、やったよ!よく書いた。自分で自分を褒めてあげたい。
担当さん「どうですか、香月さん?」
私「ダメです。大変結構が大変結構じゃないです。もっと褒めてください」
鈴華さん「香月さん、めちゃくちゃ実感籠ってますね」
私「だって、大変結構ですよ?」
鈴華さん「いや、わかりますけど……」
音響監督さんが「大変結構はもっと優しく、だそうです」と伝えると、今度は「ぐはっ」と口元を思わず押さえてしまうような「大変結構」が来ました。殺傷力が高い。これはヤバい。フェルディナンドファンの方は全員腰砕けになるといいよ!私はなりましたからね。
後は、父親に褒められている部分を再現するフェルディナンドがとてもいい感じです。ローゼマインの時の棒読みと比べてみてください。
その後はガヤの収録です。背後のざわざわとした声ですね。成績向上委員会でローゼマインが暴走するシーンでは一年生の子達が息を呑んだり、恐怖に顔を引きつらせつつ「はいっ!」と返事したりします。
音響監督さん「一年生の子達を女性全員でお願いします」
沢城さん「一年生って女の子しかいないんですか?」
私「男女両方いますよ。男の子の方が多いくらいです」
音響監督さん「両方いるそうですが、女性のキャストだけでお願いします」
沢城さん「全員って言っても四人しかいないんですけどね」
四人で七人分くらいの声を出していただきました。(笑)それにしても、沢城さんのツッコミが冴え渡っています。何というかマインみたいな言動が多くて、とても可愛いと思います。
ガヤを含めて最後まで収録が終わると、櫻井さんが急いでブースを飛び出していきました。今回は挨拶をする余裕もなかったようです。マネージャーさんが代わりに挨拶にいらっしゃいました。売れっ子って大変ですね。そんな櫻井さんにフェルディナンド役を演じていただけて嬉しいです。
皆様が帰り支度をする中、ジルヴェスター役の鳥海浩輔さんがいらっしゃいました。オットー役の浜田洋平さんは鳥海さんと二人だけで広いブースに残り、飛ばしていたシーンの収録です。これ、私だったらめちゃくちゃ緊張しそうと思いました。
オットー役の浜田さんが苦戦したのは、先に録っていたトゥーリ役の中原麻衣さんの台詞に声を合わせるところです。『本好きの下剋上』特有の初対面の貴族に対する長ったらしい挨拶。あれを最後までタイミングをずらさないように言わなければならないのです。マジ難題。
オットー役の浜田さんが発した台詞と収録されているトゥーリの台詞を合わせるのはミキサーさんの仕事です。収録された二つの声を並べて流します。
ミキサーさん「エーヴィリーベが合ってませんね。ちょっと早いです」
音響監督さん「オットー、命の神エーヴィリーベが少し早いです」
音響監督さん「どうですか?」
ミキサーさん「うーん、類希がちょっとズレてます」
こんな調子で二つの声が合うまでやり直しです。前回は声優さんが全員揃っていたので特に苦労なく収録を終えたのですが、後から合わせるのは本当に大変だと思いました。いや、キャストが揃っていれば苦労なく合わせられるのもすごいのですが……。
どちらにせよ、この苦労を見ると先に収録する方はラッキーだと思いますよ。浜田洋平さん、本当にお疲れさまでした。
浜田さんが帰った後は一人ずつ収録する終盤戦です。朝も人数が少なくてガランとしていると思ったのですが、ジルヴェスター役の鳥海浩輔さんはたった一人でブースに立っています。十数人がいた直後なので尚更一人だけというのが寂しく見えました。
しかし、収録は非常にサクサクと進みました。プロの技ですよ。前回収録しているので声を作ることもなく、やり直すところもほとんどなく、なんとジルヴェスターの出番を約十五分で収録し終わったのです。
鳥海さん「お疲れさまでした」
私と鈴華さん「お疲れさまでした」
鳥海さんは爽やかに挨拶してスタスタ帰っていきました。早すぎてビックリですよ。とても仕事人という印象でした。でも、やっぱり収録の声は他の方との会話で聞きたかったですね。
鳥海さんが帰った後、次の収録までに一時間ほど空き時間がありました。その間に國澤さんは一旦外に出て行かれたり、担当さんも仕事の電話をするために席を外したり……。私と鈴華さんはだらだらお喋りしていました。あ、お喋りだけじゃなく、プレゼント用の色紙に私と鈴華さんもサインしましたよ。鈴華さんは小さいイラスト付きです。これもまたプレゼントされるのでお楽しみに。でも、自分のサインが声優さん達と並ぶのは何か変な感じがします。
その後はスタジオの変更です。十数人が入るブース&そこに繋がる操作室から一人用のブースとそこに繋がる操作室に移動します。一人用のブースは本の読み聞かせの収録などに利用されるそうです。
シャルロッテ役の小原好美さんがいらっしゃいました。マイクの位置を調整したり、操作の指示を聴くための機械の位置を直したりした後、収録の始まりです。
國澤さん「声の年齢、もう少し下じゃありませんでした?」
音響監督さん「二年経っているので、このくらいでしょう」
私「ローゼマインと並んだ時に今回は少し年上に聞こえてほしいので、このくらいで良いと思いますよ」
問題ないということで、そのまま収録です。今回シャルロッテの台詞はほとんどなく、小原さんが声を作ることになったのは、シュバルツとコリンナです。一人で三役。
シュバルツは音響監督さんの「ちょっと機械っぽい声」という注文で一発OK。可愛く「ひめさま」と言ってくれます。私、本当に小原さんのシュバルツと中原さんのヴァイスを聞き分ける自信がありません。
そして、テストしたコリンナの声はちゃきちゃきしたイメージの平民の娘という感じでした。
國澤さん「何というか、商人の娘という部分を重視した感じですね」
鈴華さん「コリンナはおっとりですよね?」
私「平民でもお嬢様育ちなので、もっとほわっとした感じでお願いします」
そんな要望を出して、ほわっとしたコリンナにしてもらいました。オットーがメロメロになるのがわかる……。そんなコリンナです。
小原さんの収録が終わると、次はルッツ役の堀江瞬さん。堀江さんはご本人の言動が何というか、可愛らしい感じの方です。
ルッツも先に収録していたベンノと声を合わせる場面がありました。「かしこまりました」という一言ですが、意外と難しいようです。
音響監督さん「城で領主に謁見しているのでもう少し畏まってください」
堀江さん「あ、わかりました。はい……。畏まる、畏まる……畏まって、かしこまりました」
最後の独り言部分が可愛いなぁって、思いません?
回想シーンではルッツの声も幼くなっています。第一部の初期なんて五、六歳なので、十一歳の声とは違って当然。でも、当然この年齢差を一人で発声することも簡単なことではないと思うのです。
堀江さんは今回ハルトムート役もしてくださいました。たった一言ですが、こちらも声を作ります。テストした結果……。
音響監督さん「どうでしょう?」
私「……ルッツが狂った」
國澤さん「香月先生、それは……」
鈴華さん「香月さん、言い方が!」
國澤さんと鈴華さんに笑われましたが、本当にそんな感じだったのです。「ルッツはそんなことを言わない!」って一番に思いましたから。
堀江さん「あ~……。ルッツに近すぎましたか?」
音響監督さん「はい。もう少し違う声でお願いします」
違う声って何ですか?そんな簡単なものなんですか?ポカーンとしている間に堀江さんの違う声がきました。やや陶酔気味のハルトムートです。
音響監督さん「どうでしょう?」
私「問題なしです。これでお願いします」
ハルトムートが無事に終了すると、最後にガヤの収録を進めていきます。家族皆が楽しそうにしているシーンは、そこそこ長い時間を一人で楽しそうに笑い続けなければなりません。とても応援したい気分になりました。もうちょっとだよ、頑張れって。
時間が合わないから抜きの収録なので無理なことは百も承知ですが、ガヤは皆で収録してほしいですね。一人のガヤ収録は聴いている私が寂しい気分になります。
堀江さん「お疲れさまでした。……あ。このラノ一位、おめでとうございました」
私「え?ありがとうございます。堀江さんはこの後も収録ですよね?頑張ってください」
実は、このラノ一位のお祝いコメントをいただいたことがきっかけで、堀江さんともTwitterで相互フォロー状態なのです。最近の私は堀江さんと長谷川さんのお仕事を結構把握しています。
前回のドラマCDの後、Twitterをされている声優さん達を全員フォローしようと思い付いて意気込んだことがあるのです。でも、一人目で挫折しました。沢城さんの名前を検索したら何か変ななりすましアカウントがいくつもあって、無理だと悟ったからです。ご本人が本当にTwitterをされているのかどうかもわからないので、本人らしいコメントが来た時にフォローすればいいや、と。
最後の収録はヴィルフリート役の藤原夏海さんです。藤原さんは女性ですが、ご本人がちょっと勇ましくてカッコいい感じの方です。
他のキャラに合わせ、ヴィルフリートの声も少し成長した感じを出してほしいという音響監督さんの要望から始まりました。指示に対する「はいっ!」という切れの良い返事が何というか体育会系です。
前回で性格や物言いはつかんでいるので、ちょっと成長したヴィルフリートもどんどん進んでいきます。
しかし、大きな山がやってきました。ローゼマインと挨拶合わせです。短い台詞でも後から合わせるのは大変なのに、長いですからね。
藤原さん「すいません。発音はエーヴィ?エーヴェ?」
音響監督さん「エーヴィですね」
ミキサーさん「あの、『……出会いに、祝福を……』の一拍を心持ち長めに……」
藤原さん「心持ち長め……はいっ!やってみます」
この一拍やエーヴィリーベの音を伸ばす感覚が人によって違うし、相手の呼吸や口元を見ながら合わせることができないので難しいんですよね。微妙なズレを調整するミキサーさんの技術が唸ります。
ヴィルフリート役の収録が終わると、ガヤの女子生徒役です。これが思わずドキッとするほど可愛い声が来ました。本当にヴィルフリートと同じ人とは思えません。
収録が終了したので、お手洗いに行きました。戻る時に帰り支度をした藤原さんとバッタリ。少しお話をすることができました。
私「お疲れさまでした」
藤原さん「あ、お疲れさまでした」
私「前回のドラマCD、ヴィルフリート役はイメージにピッタリだという好評な感想が多かったですよ」
藤原さん「ホントですか!?やったぁ!」
拳を突き上げて全身で喜んでいる姿がヴィルフリートっぽくて微笑ましかったです。
こうしてドラマCD第二弾の収録が全て終了しました。今回は前回より長時間の収録でした。キャストの皆様、スタッフの皆様、本当にお疲れさまでした。バラバラに収録した声が綺麗に合わさった完成品が届くのを楽しみにしています。
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