|【前 編】|【中 編】|【後 編】|
○中島愛さん&寺崎裕香さん
中島愛さんはトゥーリ役、マルティナ役。寺崎裕香さんはヴィルフリート役を演じてくださいます。
まずはマルティナとヴィルフリート。貴族院の親睦会の様子から始まります。以前の声を聞いて収録を始めるわけですが、中島さんの心配する声が聞こえました。
「前は1ワードだったのに、まさかこんなに喋るキャラだったなんて……」
ローゼマインから見ればマルティナはほとんどモブなのですが、ディートリンデの側仕え見習いとして側にいるので、ディートリンデが動くとセリフが増えるんですよね。……とはいえ、今回も2ワードですよ。どっちも長いですが。
「トゥーリに似てる。でも、トゥーリじゃない~」って嘆く中島さんの声を聞いていると、頭を抱えている様子が目に見えるようでした。
マルティナのセリフで中島さんが一番苦労していたのが「魔力供給」。「言えてなかった……ですよね?」「駄目だったね。はい、もう一回」「うぁ、言えない。はまっちゃった。あ~……」
何度か挑戦してクリア。私はリモート先から「頑張れ~」と応援していました。中島さんはマルティナに苦戦していましたが、セリフ自体は少ないのですぐに終わりました。
次はトゥーリで採寸の場面です。アニメで収録しているからでしょうか。こちらはスムーズに終了。ローゼマインとトゥーリの会話で聞きたかったです。
ヴィルフリートは前編初めの貴族院とローゼマインが戻ってきた後にセリフが多いので、中島さんと寺崎さんは一緒に収録ですが、会話的な絡みはほとんどありません。前編のラストはヴィルフリートの独壇場。個人的にはヴィルフリートの一番の見せ場だと思っています。
「○ページ、モノローグみたいになっていますね。もうちょっとセリフにしてください」「×ページ、もうちょっと『おいおい』って感じで呆れた雰囲気が欲しいです」「△ページ、そこは少し強くしてください」
カッコいいヴィルフリートになりました。
○小林裕介さん
小林裕介さんはエックハルト役です。
以前に収録した声を聞いて始めるのですが、そのセリフが短い。「恐れ入ります」とか「はっ!」も含まれていてスタッフの方が「こんなのしかないのか」と苦笑気味になっていました。それでも、すぐに対応できる小林さん。
「×ページ、モノローグをもう少し控えめにしてください。セリフと同じ感じに聞こえるので」「○ページ、『開けた』を『開ける』に修正してください。まだ開いていないので過去形はおかしいです」「×ページ、もうちょっと嬉しそうな響きが欲しいです」「△ページ、ここはもっと懇願してください。感情を入れてほしいです。唯一の主を助けられるかどうかのところなので」「○ページ、ハンネローレがハンネローネになっていました」
いくつかの修正をしながらエックハルトを終えると、モブ役にも協力していただきました。
ランツェナーヴェの兵士やガヤです。「もっと眩しそうに」なんて指示に対応できるんですよ。意味がわからない。声優さんってすごいですよね。
「今回は一番喋ったね」「エックハルト、前回は一言でしたから。あ、OVAは結構喋りましたよ。今回は珍しく多かったです」
スタッフさんと喋る少し嬉しそうな小林さんの声が聞こえてきました。エックハルトは口数が多いキャラではありませんし、「恐れ入ります」と「はっ!」ばかりですからね。そこにいるのに、セリフがない時は本当にないんですよ。でも、今回の脚本にはSS置き場のエックハルト視点「ローゼマインが不在の冬」が少し入っていますから。ナレーションもあるし、セリフも多めです。
他はあまりエックハルトが目立つシーンが思い浮かばないので、こんなにエックハルトの長いセリフが入るドラマCDはこれっきりかもしれません。エックハルトファンの方はこの機会にぜひぜひ。
○諸星すみれさん
諸星すみれさんはハンネローレ役とレオノーレ役を担当してくださっています。
まずはハンネローレ。以前に収録した声を聞いてから始めます。今回は少しセリフが多めです。特に後編は出番が多いので、ハンネローレの可愛い声が結構あります。勇ましい「はっ!」なのに、ハンネローレだとめちゃくちゃ可愛いんですよね。特に引っかかるところはなく、淡々と進みました。
次はレオノーレ。セリフが少ないので、すぐに終わりました。今回の後編ではずっとローゼマインの側に控えている割に、レオノーレは意外とセリフが少なめです。護衛騎士という仕事上、主に危険や害が及ばない限り、口を挟まないせいでしょうね。レオノーレのそういうところはエックハルトと似ているのかもしれません。
諸星さんはお話しする時は明るくて可愛らしい方なのですが、スタジオに入ると一気に雰囲気が変わります。めちゃくちゃ真面目で真剣なんですよね。お喋りしている時と、目つきが変わるのは今までのアフレコで知っていましたが、今回がリモートだったせいか声の変化も顕著であることに気付きました。
○森川智之さん
森川智之さんはボニファティウス役です。アニメではカルステッド役を担当してくださっています。ボニファティウスはカルステッドの父親です。親子の年齢差を出せるところがすごいと思っています。
「○ページ、成長した孫娘に初めて会ったシーンなので、もうちょっと嬉しさが欲しいです」
私の指摘に合わせて大喜びのボニファティウスを演じた直後、森川さん本人は「……やりすぎましたか?」と心配そうでしたが、問題なしです。「いやいや、大丈夫です。ボニファティウスらしくなったと思います」
「×ページ、他領の発音が他の方と違いません?」「△ページ、ここはもうちょっと強くというか、重みが欲しいです」
ボニファティウスはエーレンフェストで最年長の領主一族です。また、異世界の前世持ちで平民出身のため親しい人は全部救いたいローゼマインや、その突飛な意見を受け入れようとするジルヴェスターと違って、領地のために少数を切り捨てる判断ができる領主一族らしい領主一族です。あの状況でフェルディナンドを救おうとすることは、領主一族の判断として間違っていると指摘できる貴重な存在。大多数の貴族代表としての意見の重みが欲しいところ。さすが森川さん。見事に重みと存在感のあるボニファティウスに仕上がりました。
その後はガヤでご協力いただきました。その辺りはあっさり終わりです。
○本渡楓さん&長縄まりあさん
本渡楓さんはシャルロッテ役、シュバルツ役、アンゲリカ役。初参加の長縄まりあさんはレティーツィア役、グレーティア役を演じてくださっています。
二人に掛け合いはないので、それぞれで収録を進めていく感じになりました。まずはシュバルツ。以前に収録した声を聞いてから始めます。図書館でローゼマインを迎え、じじ様のところへ誘導する声がやはり可愛いです。
次にシャルロッテ。以前に収録した声を聞いてから始めます。成長したお姉様を迎えるシャルロッテも可愛い声です。次回はシャルロッテも声を成長させた方が良いかもしれません。本渡さんは特に言うことがないまま進みました。
それから、アンゲリカとレティーツィアです。アンゲリカは以前に収録した声を聞けば問題なし。前編のアンゲリカはセリフも少ないのですぐに終わりました。アンゲリカは後編の収録までちょっと待機。レティーツィアの声作りを始めます。長縄さんは地の声が幼くてとても可愛いので、特に問題なく可愛いレティーツィアになると思いました。
「先生、どうですか?」「声はいいけど、喋り方が幼すぎますね。舌ったらずな感じが……」「もうちょっと年上に聞こえる感じにしてもらいますか?」
テストで聞いた声に、音響監督さんが指示を出して修正を入れてもらいます。声の年齢は上がったけれど、喋り方は私の意図していたものが伝わらず……。
「どうですか?」「声は幼くて良いけど、普通に喋ってほしいんです」
私の求める方向性が音響監督さん達にも伝わっていない感じで、どう説明すれば良いのか悩みました。
「えーと、今の喋り方ではレティーツィアがすごく幼くて甘ったれに聞こえるんですよ。アニメのフリーダやトゥーリは七歳くらいですが、別に舌っ足らずな喋り方なんてしてないでしょう? レティーツィアはそれより二、三歳上です。冬には貴族院に入学する貴族女性の声に聞こえないんですよね」
声は幼く、喋り方は普通に。その注文が通ってレティーツィアの声ができました。
「×ページ、ローゼマインではなくレティーツィアのセリフなので『はめられた』より『陥れられた』に修正してもらって良いですか?」「ナレーションがいきなり暗くなるな。もっと普通にしてほしい」
いくつかの修正を入れながらテストを行う中、ナレーションに対して音響監督さんの指示が入りました。レティーツィアのセリフの後、急に教科書の朗読が始まったような声になるのです。何度か修正していただきましたが、違う。修正してほしい方向性が長縄さんに上手く伝わっていない感じです。
「ナレーションというより朗読になってません?」「レティーツィアのナレーションじゃなく、第三者のナレーションにいきなり切り替わるって感じですね。キャラではなく朗読を意識してる? ナレーションもレティーツィアであってほしいです」
話し合いを経た後、「キャラとして喋って」と音響監督さんが指示すると、「あ、そういうことですか」と長縄さんから明るい返事がきました。修正の意図がきちんと伝わると、一気に変化して一度でOKが出るんです。相手に伝わるように説明するのは難しいといつも思います。
レティーツィアのシーンが終わると、次はグレーティアの声を作ります。
「さっきのナレーションくらいの声でお願いしたいです」
私の希望に、音響監督さんは「ちょっと暗くない?」と心配そうに言いましたが、グレーティアはそんなに明るいキャラではないので問題ありません。こちらの声はすぐにできました。
「○ページ、ちょっとオドオドしすぎですね。困惑くらいで」
セリフも少ないのであっさり終わります。再びアンゲリカの出番が来ました。
「アンゲリカの戦う声とかアクションを入れてください。やぁっ! とか」「○ページのセリフは距離感のある感じが欲しいです。騎獣と騎獣の距離……」「×ページの『効くようですが』にはもう少しドヤって雰囲気が欲しいですね」
カッコいいアンゲリカの戦闘シーン、お楽しみに。
○潘めぐみさん
潘めぐみさんはディートリンデ役、クラリッサ役を担当してくださっています。
まずはディートリンデから。以前に収録した声を聞いた後、台本を見ながらカタカナの発音を確認していました。
「×ページ、『領主候補生』ではなく『領主一族』に修正してください」「○ページ、エーレン『ス』フェストではなく、エーレンフェストですね」
全く悪気がなく、自分の目的のためならば躊躇いなく、当然の行為としてフェルディナンドに毒を与えられるディートリンデ。潘さんは素で悪いことができるキャラを見事に演じてくれました。
次はクラリッサです。こちらも以前に収録した声を聞いてから始めます。ディートリンデとは全く違う元気なクラリッサ。同年代のキャラなのに見事な演じ分けだと思います。
クラリッサとハルトムートが声を合わせる「お任せくださいませ」のシーン。「先に収録されたハルトムートを流すので、それに合わせてください」
ハルトムートの声を聞いた潘さんから質問がありました。
「このセリフはローゼマイン様好きを全面的に出す感じですか?」「まさにそういう感じでお願いします。ハルトムートに張り合う感じが欲しいです」「わかりました」
クラリッサらしいクラリッサに仕上がりました。
○岡井カツノリさん
岡井カツノリさんはラウレンツ役です。ドラマCD4ではザーム役で参加してくださっていますし、アニメ「本好きの下剋上」でモブ役をいくつも演じてくださっています。
ラウレンツの声作りから始まりましたが、あっさりクリア。最初からほぼイメージ通りだったので、全く修正なしでした。
「ラウレンツってセリフ、少ないよな?」「少ないけど、長いですよ。例の祝詞ですから」「あの長いのか。頑張ってもらわないと……」
スタッフさん達が話しているのが聞こえてきます。少ないのに長いし、後から合わせるの大変ですよね。祝詞に合わせられるか心配されていましたが、出だしを合わせることに集中したら比較的すんなり終わりました。
ラウレンツが終わると、モブ役にご協力いただきました。ガヤ1、男1、ランツェナーヴェの兵士など、色々なところに岡井さんがいます。その中でも個人的に一番驚いたのが、ヴォルヘニールです。
「唸り声を長めにくれる?」「襲いかかるところをください」
ヴォルヘニールの唸り声が本当に上手くて! すごい!
ドラマCD3でターニスベファレンを声優さんが演じると聞いた時は楽しみにしていたのに、SEを使うことになって鳴き声が聞けなくて残念だったんですよね。今回のヴォルヘニールはSEではなく岡井さんが演じてくださいました。聞けてよかったです。
そんな流れで四日間にわたるアフレコが終わりました。本当に声優さん達がバラバラに収録するので、全ての声が合わさるとどういう形になるのかアフレコ中には完成形が見えませんでした。ドラマCDの仕上がりが楽しみです。
香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD7
アフレコレポート【後編】
|【前 編】|【中 編】|【後 編】|
○中島愛さん&寺崎裕香さん
中島愛さんはトゥーリ役、マルティナ役。
寺崎裕香さんはヴィルフリート役を演じてくださいます。
まずはマルティナとヴィルフリート。
貴族院の親睦会の様子から始まります。以前の声を聞いて収録を始めるわけですが、中島さんの心配する声が聞こえました。
「前は1ワードだったのに、まさかこんなに喋るキャラだったなんて……」
ローゼマインから見ればマルティナはほとんどモブなのですが、ディートリンデの側仕え見習いとして側にいるので、ディートリンデが動くとセリフが増えるんですよね。……とはいえ、今回も2ワードですよ。どっちも長いですが。
「トゥーリに似てる。でも、トゥーリじゃない~」って嘆く中島さんの声を聞いていると、頭を抱えている様子が目に見えるようでした。
マルティナのセリフで中島さんが一番苦労していたのが「魔力供給」。
「言えてなかった……ですよね?」
「駄目だったね。はい、もう一回」
「うぁ、言えない。はまっちゃった。あ~……」
何度か挑戦してクリア。私はリモート先から「頑張れ~」と応援していました。
中島さんはマルティナに苦戦していましたが、セリフ自体は少ないのですぐに終わりました。
次はトゥーリで採寸の場面です。
アニメで収録しているからでしょうか。こちらはスムーズに終了。ローゼマインとトゥーリの会話で聞きたかったです。
ヴィルフリートは前編初めの貴族院とローゼマインが戻ってきた後にセリフが多いので、中島さんと寺崎さんは一緒に収録ですが、会話的な絡みはほとんどありません。
前編のラストはヴィルフリートの独壇場。個人的にはヴィルフリートの一番の見せ場だと思っています。
「○ページ、モノローグみたいになっていますね。もうちょっとセリフにしてください」
「×ページ、もうちょっと『おいおい』って感じで呆れた雰囲気が欲しいです」
「△ページ、そこは少し強くしてください」
カッコいいヴィルフリートになりました。
○小林裕介さん
小林裕介さんはエックハルト役です。
以前に収録した声を聞いて始めるのですが、そのセリフが短い。「恐れ入ります」とか「はっ!」も含まれていてスタッフの方が「こんなのしかないのか」と苦笑気味になっていました。
それでも、すぐに対応できる小林さん。
「×ページ、モノローグをもう少し控えめにしてください。セリフと同じ感じに聞こえるので」
「○ページ、『開けた』を『開ける』に修正してください。まだ開いていないので過去形はおかしいです」
「×ページ、もうちょっと嬉しそうな響きが欲しいです」
「△ページ、ここはもっと懇願してください。感情を入れてほしいです。唯一の主を助けられるかどうかのところなので」
「○ページ、ハンネローレがハンネローネになっていました」
いくつかの修正をしながらエックハルトを終えると、モブ役にも協力していただきました。
ランツェナーヴェの兵士やガヤです。
「もっと眩しそうに」なんて指示に対応できるんですよ。意味がわからない。声優さんってすごいですよね。
「今回は一番喋ったね」
「エックハルト、前回は一言でしたから。あ、OVAは結構喋りましたよ。今回は珍しく多かったです」
スタッフさんと喋る少し嬉しそうな小林さんの声が聞こえてきました。エックハルトは口数が多いキャラではありませんし、「恐れ入ります」と「はっ!」ばかりですからね。そこにいるのに、セリフがない時は本当にないんですよ。
でも、今回の脚本にはSS置き場のエックハルト視点「ローゼマインが不在の冬」が少し入っていますから。ナレーションもあるし、セリフも多めです。
他はあまりエックハルトが目立つシーンが思い浮かばないので、こんなにエックハルトの長いセリフが入るドラマCDはこれっきりかもしれません。エックハルトファンの方はこの機会にぜひぜひ。
○諸星すみれさん
諸星すみれさんはハンネローレ役とレオノーレ役を担当してくださっています。
まずはハンネローレ。
以前に収録した声を聞いてから始めます。
今回は少しセリフが多めです。特に後編は出番が多いので、ハンネローレの可愛い声が結構あります。
勇ましい「はっ!」なのに、ハンネローレだとめちゃくちゃ可愛いんですよね。
特に引っかかるところはなく、淡々と進みました。
次はレオノーレ。
セリフが少ないので、すぐに終わりました。
今回の後編ではずっとローゼマインの側に控えている割に、レオノーレは意外とセリフが少なめです。護衛騎士という仕事上、主に危険や害が及ばない限り、口を挟まないせいでしょうね。レオノーレのそういうところはエックハルトと似ているのかもしれません。
諸星さんはお話しする時は明るくて可愛らしい方なのですが、スタジオに入ると一気に雰囲気が変わります。めちゃくちゃ真面目で真剣なんですよね。お喋りしている時と、目つきが変わるのは今までのアフレコで知っていましたが、今回がリモートだったせいか声の変化も顕著であることに気付きました。
○森川智之さん
森川智之さんはボニファティウス役です。アニメではカルステッド役を担当してくださっています。ボニファティウスはカルステッドの父親です。親子の年齢差を出せるところがすごいと思っています。
「○ページ、成長した孫娘に初めて会ったシーンなので、もうちょっと嬉しさが欲しいです」
私の指摘に合わせて大喜びのボニファティウスを演じた直後、森川さん本人は「……やりすぎましたか?」と心配そうでしたが、問題なしです。
「いやいや、大丈夫です。ボニファティウスらしくなったと思います」
「×ページ、他領の発音が他の方と違いません?」
「△ページ、ここはもうちょっと強くというか、重みが欲しいです」
ボニファティウスはエーレンフェストで最年長の領主一族です。また、異世界の前世持ちで平民出身のため親しい人は全部救いたいローゼマインや、その突飛な意見を受け入れようとするジルヴェスターと違って、領地のために少数を切り捨てる判断ができる領主一族らしい領主一族です。
あの状況でフェルディナンドを救おうとすることは、領主一族の判断として間違っていると指摘できる貴重な存在。大多数の貴族代表としての意見の重みが欲しいところ。
さすが森川さん。見事に重みと存在感のあるボニファティウスに仕上がりました。
その後はガヤでご協力いただきました。
その辺りはあっさり終わりです。
○本渡楓さん&長縄まりあさん
本渡楓さんはシャルロッテ役、シュバルツ役、アンゲリカ役。
初参加の長縄まりあさんはレティーツィア役、グレーティア役を演じてくださっています。
二人に掛け合いはないので、それぞれで収録を進めていく感じになりました。
まずはシュバルツ。
以前に収録した声を聞いてから始めます。
図書館でローゼマインを迎え、じじ様のところへ誘導する声がやはり可愛いです。
次にシャルロッテ。
以前に収録した声を聞いてから始めます。
成長したお姉様を迎えるシャルロッテも可愛い声です。次回はシャルロッテも声を成長させた方が良いかもしれません。
本渡さんは特に言うことがないまま進みました。
それから、アンゲリカとレティーツィアです。
アンゲリカは以前に収録した声を聞けば問題なし。前編のアンゲリカはセリフも少ないのですぐに終わりました。アンゲリカは後編の収録までちょっと待機。
レティーツィアの声作りを始めます。長縄さんは地の声が幼くてとても可愛いので、特に問題なく可愛いレティーツィアになると思いました。
「先生、どうですか?」
「声はいいけど、喋り方が幼すぎますね。舌ったらずな感じが……」
「もうちょっと年上に聞こえる感じにしてもらいますか?」
テストで聞いた声に、音響監督さんが指示を出して修正を入れてもらいます。声の年齢は上がったけれど、喋り方は私の意図していたものが伝わらず……。
「どうですか?」
「声は幼くて良いけど、普通に喋ってほしいんです」
私の求める方向性が音響監督さん達にも伝わっていない感じで、どう説明すれば良いのか悩みました。
「えーと、今の喋り方ではレティーツィアがすごく幼くて甘ったれに聞こえるんですよ。アニメのフリーダやトゥーリは七歳くらいですが、別に舌っ足らずな喋り方なんてしてないでしょう? レティーツィアはそれより二、三歳上です。冬には貴族院に入学する貴族女性の声に聞こえないんですよね」
声は幼く、喋り方は普通に。その注文が通ってレティーツィアの声ができました。
「×ページ、ローゼマインではなくレティーツィアのセリフなので『はめられた』より『陥れられた』に修正してもらって良いですか?」
「ナレーションがいきなり暗くなるな。もっと普通にしてほしい」
いくつかの修正を入れながらテストを行う中、ナレーションに対して音響監督さんの指示が入りました。レティーツィアのセリフの後、急に教科書の朗読が始まったような声になるのです。何度か修正していただきましたが、違う。修正してほしい方向性が長縄さんに上手く伝わっていない感じです。
「ナレーションというより朗読になってません?」
「レティーツィアのナレーションじゃなく、第三者のナレーションにいきなり切り替わるって感じですね。キャラではなく朗読を意識してる? ナレーションもレティーツィアであってほしいです」
話し合いを経た後、「キャラとして喋って」と音響監督さんが指示すると、「あ、そういうことですか」と長縄さんから明るい返事がきました。
修正の意図がきちんと伝わると、一気に変化して一度でOKが出るんです。相手に伝わるように説明するのは難しいといつも思います。
レティーツィアのシーンが終わると、次はグレーティアの声を作ります。
「さっきのナレーションくらいの声でお願いしたいです」
私の希望に、音響監督さんは「ちょっと暗くない?」と心配そうに言いましたが、グレーティアはそんなに明るいキャラではないので問題ありません。
こちらの声はすぐにできました。
「○ページ、ちょっとオドオドしすぎですね。困惑くらいで」
セリフも少ないのであっさり終わります。
再びアンゲリカの出番が来ました。
「アンゲリカの戦う声とかアクションを入れてください。やぁっ! とか」
「○ページのセリフは距離感のある感じが欲しいです。騎獣と騎獣の距離……」
「×ページの『効くようですが』にはもう少しドヤって雰囲気が欲しいですね」
カッコいいアンゲリカの戦闘シーン、お楽しみに。
○潘めぐみさん
潘めぐみさんはディートリンデ役、クラリッサ役を担当してくださっています。
まずはディートリンデから。
以前に収録した声を聞いた後、台本を見ながらカタカナの発音を確認していました。
「×ページ、『領主候補生』ではなく『領主一族』に修正してください」
「○ページ、エーレン『ス』フェストではなく、エーレンフェストですね」
全く悪気がなく、自分の目的のためならば躊躇いなく、当然の行為としてフェルディナンドに毒を与えられるディートリンデ。潘さんは素で悪いことができるキャラを見事に演じてくれました。
次はクラリッサです。
こちらも以前に収録した声を聞いてから始めます。ディートリンデとは全く違う元気なクラリッサ。同年代のキャラなのに見事な演じ分けだと思います。
クラリッサとハルトムートが声を合わせる「お任せくださいませ」のシーン。
「先に収録されたハルトムートを流すので、それに合わせてください」
ハルトムートの声を聞いた潘さんから質問がありました。
「このセリフはローゼマイン様好きを全面的に出す感じですか?」
「まさにそういう感じでお願いします。ハルトムートに張り合う感じが欲しいです」
「わかりました」
クラリッサらしいクラリッサに仕上がりました。
○岡井カツノリさん
岡井カツノリさんはラウレンツ役です。ドラマCD4ではザーム役で参加してくださっていますし、アニメ「本好きの下剋上」でモブ役をいくつも演じてくださっています。
ラウレンツの声作りから始まりましたが、あっさりクリア。最初からほぼイメージ通りだったので、全く修正なしでした。
「ラウレンツってセリフ、少ないよな?」
「少ないけど、長いですよ。例の祝詞ですから」
「あの長いのか。頑張ってもらわないと……」
スタッフさん達が話しているのが聞こえてきます。少ないのに長いし、後から合わせるの大変ですよね。
祝詞に合わせられるか心配されていましたが、出だしを合わせることに集中したら比較的すんなり終わりました。
ラウレンツが終わると、モブ役にご協力いただきました。ガヤ1、男1、ランツェナーヴェの兵士など、色々なところに岡井さんがいます。
その中でも個人的に一番驚いたのが、ヴォルヘニールです。
「唸り声を長めにくれる?」
「襲いかかるところをください」
ヴォルヘニールの唸り声が本当に上手くて! すごい!
ドラマCD3でターニスベファレンを声優さんが演じると聞いた時は楽しみにしていたのに、SEを使うことになって鳴き声が聞けなくて残念だったんですよね。今回のヴォルヘニールはSEではなく岡井さんが演じてくださいました。聞けてよかったです。
そんな流れで四日間にわたるアフレコが終わりました。本当に声優さん達がバラバラに収録するので、全ての声が合わさるとどういう形になるのかアフレコ中には完成形が見えませんでした。ドラマCDの仕上がりが楽しみです。
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