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香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD8アフレコレポート【その2】

香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD8
アフレコレポート【その2】

【その1】【その2】【その3】【その4】

○日野まりさん、衣川里佳さん

日野まりさんはカミル役、ニコラ役、幼年&少年ジルヴェスター役で、衣川里佳さんはコリンナ役、少女ゲオルギーネ役です。

まずはニコラの声を作ります。今まで声がないので、作るところから始まります。
日野さんが演じてくださったのは、とてもおとなしくて側仕えらしいと言えば側仕えらしい女性の声。

「ニコラじゃないですね。もっと明るい感じにしてください」

でも、やっぱりおとなしい。これは指示の仕方が難しい感じかな? と私が悩んだところで鈴華さんからも指摘が入ります。

「ニコラはもっと元気なイメージですよね?」
「そう。今のままではにこにこニコラって感じがしませんね」

鈴華さんと私のやり取りを聞いていた音響監督さんの方が心配そうな声になります。

「ニコラって神殿の側仕えでしょ? そんなに元気いっぱいでいいの?」
「なるほど。そう言われてみると、神殿の側仕えとしてニコラは異例の元気さですね。でも、応援係のニコラは明るく元気でなくちゃダメなんですよ」

私達の言葉をまとめる音響監督さん。
「側仕えとか考えなくて良いから、いっそはっちゃけるくらいの元気さでいってみて」

その指示で可愛いニコラになりました。

コリンナはアニメでも収録があったので、特に問題なし。少し年齢を上げてもらったくらいです。
ニコラとコリンナの収録は特に問題なく終了です。

それが終わると、次は幼少ジルヴェスターと幼少ゲオルギーネの声を作っていきます。

「少女ゲオルギーネはイメージ通りですね。少年ジルヴェスターはもうちょっと年齢を上げてください。声質は今のままでOKです」

これが結構大変でした。回想シーンなので「○○までは3~4歳、そこから××までは7歳くらい、このセリフ以降は10歳くらいで……」と、とても細かく年齢が変わっていくんですよね。
お二人とも指定する年齢に合わせて声を変えてくださいます。
プロ、すごい。

カミルの声も作りました。アニメでも泣き声はあったのですが、洗礼式の頃と同じではないので必要なのです。

「カミルの声、女の子っぽ過ぎませんか?」
「ですよね? もうちょっと男の子だとわかる声にしてください。あと、幼すぎるかな? 喋り方はアニメのルッツくらいをイメージしてください」
「年齢が上がっても良いので、もうちょっと落ち着いた雰囲気にしていただけますか? 一応貴族の館に来ているので」

日野さんはアニメでもカミル役を担当してくださっています。アニメのカミルの泣き声と比べると、「カミル、めちゃくちゃ大きくなって……」という気持ちを味わえるのではないでしょうか。

○岡井カツノリさん、渡井奏斗さん、廣瀬武央さん

岡井カツノリさんはラウレンツ役とモブ役がたくさんで、渡井奏斗さんと廣瀬武央さんはモブ役をたくさん演じてくださいました。戦いの様子を盛り上げてくださっています。

ラウレンツ、前回は「はっ!」とか祝詞など、他の方と一緒に喋るセリフしかなかったのですが、なんと今回はラウレンツ個人のセリフがあるんです。
やったね。

そうそう。とても短いやり取りですが、書籍にないラウレンツとマティアスの会話もあるので二人のファンの方はお楽しみに。

ラウレンツの収録を終えると、どんどんとモブ役を収録していきます。
岡井カツノリさんが兵士5、アーレンスバッハの貴族1、文官、団長、
渡井奏斗さんがダンケルフェルガー騎士2、兵士3、アーレンスバッハの貴族3、兵士2、メルヒオールの護衛騎士2、
廣瀬武央さんが兵士4、敵、兵士1、神殿の騎士8、
こんな感じでたくさんです。
岡井さんなんて、実は名前のないゲルラッハ騎士団の団長の方がラウレンツよりセリフが多いんですよね。こんなはずでは……。

「○ページ、はっ! をよろしく。先に収録したのに合わせて……」

一応「せーの」と入れてくださっているけれど、上手く合わない。三人の声が微妙にずれています。私は特に気にならない程度のズレなのですが、音響さん達にはダメなようです。

「うーん、何か合わないから、三人の内の誰かが音頭とってくれる?」

音響監督さんの指示で三人の声がピタリと揃いました。すでにある収録に複数人が一度に呼吸を合わせるのは、やっぱり難しいみたいです。

モブ役だけでなく、三人にはガヤでも協力していただきました。祝勝会のざわめきとか逃げ惑う下町の人達とか……。

「ガヤはなるべく大人数で録りたいんだけどな」
「カーテンが邪魔で上手く声が交じらないんですよね。ガヤなのにどうしても個が際立つんですよ」
「ノイズキャンセラってあるじゃん。あんな感じで、マスクを付けたままでもノイズを除いてくれるシステムとかできないかな」

音響さん達の悩みを解決するシステム、誰か作ってください。需要はあります。

「うん、こんなもんかな」
「あの、ヴォルヘニールも担当することになっていますが……」

そう言った岡井さんに音響監督さんが少し考えた後で、「うーん、今回はSEにするわ。ここに人の声を入れない方が良い」と答えました。前回のヴォルヘニールは岡井さんで、見事な魔獣の吠え声でしたが、今回は入れない方が良いそうです。そういう判断って何が基準なんでしょうね? 長年この仕事に携わってきたベテランさんの仕事だなと思いました。

○狩野翔さん、島田高虎さん、千葉航平さん

狩野翔さんはフラン役です。島田高虎さんと千葉航平さんはモブ役をたくさん演じてくださっています。

フランはアニメの収録があったので、サンプルボイスはなしで進めていきます。

「○ページ、ちょっと尺をとりすぎだな。もうちょっと普通に」
「フラン、ラストはもうちょっと嬉しさを出してください」

特に問題なくフランの収録が終わると、モブ役の収録です。
狩野翔さんは兵士1、イルクナーの騎士1、敵の騎士1、神殿の騎士1、メルヒオールの護衛騎士1。
島田高虎さんはダンケルフェルガー騎士1、兵士2、兵士9、イルクナーの騎士2、旧ベルケシュトックのギーベ、メルヒオールの護衛騎士3。
千葉航平さんは兵士5、敵の騎士1、敵の騎士2、旧ベルケシュトックの騎士。

「先生。ギーベの声、大丈夫? 年寄りすぎない?」
島田高虎さんが担当してくださった旧ベルケシュトックのギーベ。戦いの場に出てくるには結構お年を召した声に聞こえます。
「あ~……。うーん、年寄りすぎる気もするけど、威厳はあるし、許容範囲内なのでOKです」

モブの収録が終わると、ガヤの収録にも協力していただきました。ビンデバルトで騒ぐダンケルフェルガーの騎士達が楽しそうです。(笑)

そんな感じで長い1日目が終了。
お疲れ様でした。

2日目は井口裕香さん(前編)、小山剛志さん、寺崎裕香さん、中島愛さん、石見舞菜香さんです。

○井口裕香さん(前編)

井口裕香さんは主人公のローゼマイン役です。
主役は本当にセリフ数が多いので、本日の収録は前編だけです。後編は後日になります。

井口さんはアニメ、ドラマCDに加えてオーディオブックの収録もしているので、基本的には収録がサクサク進みます。
「すみません。『与えたまし』は脱字です。修正をお願いします」
「相対は『そうたい』ではなく『あいたい』と読んでください」
「すみません。○ページ、『6つです』の前に『小隊が』を入れてください。地の文の説明がないのでわかりにくいです」
「×ページ、『ひまつ』ではなく『しぶき』と読んでください」
「義手の発音が他の方と違うと思うのですが……」
「先生、△ページって説明的すぎるのでちょっと修正しませんか?」

今回は脚本のチェックミスが多かったですね。申し訳ないです。それから、実際に収録してみると、微妙なセリフの修正も結構ありました。

しかし、さすが井口さん。
慣れていらっしゃるため、予定時間の半分ほどで収録は終わりです。
写真撮影と色紙にサインをして「お疲れ様でした」と元気な挨拶と共に帰っていきました。

○小山剛志さん、寺崎裕香さん

小山剛志さんはギュンター役とクラペッヒ役で、寺崎裕香さんはヴィルフリート役とユーディット役です。

「サンプルボイスある?」
「ヴィルフリートとユーディットは準備してます。ギュンターも聞きますか?」
「聞かなくても大丈夫だろう」
「アニメで収録していましたからね」

音響さん達の判断によってギュンターはサンプルボイスを聞くことなく収録開始です。

「○ページのギュンター、お守りを渡されたんですから、もうちょっと嬉しそうな声じゃなくていいですか?」
「確かに家族の心配と愛情をもっと噛み締めてほしいですね」
「×ページ、最初から勢いよくいってください」

西門の戦いが終わったら神殿の戦いです。こちらはユーディットの活躍が光ります。

「○ページ、ナレーションなのでもうちょっと落ち着いてほしいです」
「×ページ、台本が『クラリネッサ』になっていますが。『クラリッサ』が正しいです。修正お願いします」
「○ページ、『ハンネローネ』って言いませんでした?」

ヴィルフリートは祝勝会のシーンに出てきますが、特に修正することもなく収録は終了です。

その後は小山さんにクラペッヒ役やモブ役である神殿指揮官の騎士の収録をお願いしたり、寺崎さんに孤児達の声をお願いしたり……。
サクッと収録は終了です。

○中島愛さん、石見舞菜香さん

中島愛さんはトゥーリ役、石見舞菜香さんはフィリーネ役、リーゼレータ役です。

「今まで収録してきたフィリーネの声が少な過ぎてサンプルボイスを探すのも大変でした」という録音助手さんの声が聞こえました。
仕方ありませんね。書籍にはそれなりに出番があるけれど、重要エピソードだけを抜き出すドラマCDだとフィリーネの出番は削られがちなのです。残念。

「せっかく探してくださったサンプルボイスに申し訳ないのですが、そのままではなくフィリーネの年齢を上げてください」

声の確認をすると収録開始です。
石見さんのリーゼレータとフィリーネも、中島さんのトゥーリも特に問題なく進んでいきます。

「ここの『おかえりなさいませ』はリーゼレータとフィリーネの両方をくれる?」
「はい」

ローゼマインを出迎える側近達の声はこうして厚みを増していきます。
ガヤや孤児達の声を二人からいただいたら終わりです。

これで2日目が終了。この日は短かくて楽でした。とはいえ、アフレコが終わったら書籍のために「エーレンフェスト防衛戦」を書かなければなりません。書いている時にキャストの皆様の声が脳内に鮮やかに浮かぶのが楽しかったです。

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