2025年8月10日発売!
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「本好きの下剋上  ハンネローレの貴族院五年生」ドラマCDアフレコレポート【その2】

「本好きの下剋上  ハンネローレの貴族院五年生」ドラマCD2
アフレコレポート【その2】

【その1】【その2】|【その3】|

○夏吉ゆうこさん

2日目の最後、ハイルリーゼ役と側近女1役の夏吉ゆうこさんは一人で収録です。

前回のハイルリーゼの声を確認したら開始です。

「……ん? それ、後編のセリフじゃないか?」

「うわっ! 台本を間違ってました! 前編、こっちだ」

急いで台本を持ち直す夏吉さん。慌てたのか筆箱か何か落ちた音がしています。
大丈夫だから落ち着いて……と私が画面に向かって言っている間に台本を持ち直したようで、収録の再開です。

「○ページ、ドレヴァンヒェルの発音が違うな」
「×ページ、領主候補生はワンワードでお願いします」
「△ページ、からかう雰囲気を入れてください」
「○ページ、躊躇いがちに言ってくれますか?」

セリフ数は少ないので、それほど時間はかからずに終わりました。
お疲れ様でした。

3日目

○遠藤綾さん

3日目はまずエグランティーヌ役の遠藤綾さんが一人で収録します。

2巻の書き下ろし短編がエグランティーヌ視線で、その部分も脚本に入っています。そのため、「小説家になろう」のweb版だけ読んで想像するより今回のドラマCDではエグランティーヌとアナスタージウスの出番が多めになりました。

「前回の声を確認してから始めます」
「よろしくお願いします」

お上手なので収録はどんどん進んでいきます。

「○ページ、大丈夫なのでしょうか、が流れたかな」
「×ページ、ここは感情をもっと抑える感じでお願いできますか?」
「△ページ、他領のイントネーションが違いません?」
「○ページ、『必要』ですね。『危険』って言っていました」
「×ページ、『求婚者』な。『婚約者』って言った」

問題が次々起こって頭の痛いツェントの演技が素晴らしいです。
今後3巻が来たら2巻以上に頭が痛くなっちゃいますからね。頑張れ、ツェント。

「お疲れ様でした」

予定より早めに終えて朗らかな挨拶と共に帰られました。
私達は次の面々が到着するまで一休みです。

○諸星すみれさん、坂泰斗さん、寺崎裕香さん、朝井彩加さん、安田陸矢さん、松嵜麗さん、近藤唯さん

次はハンネローレ役の諸星すみれさん、ケントリプス役の坂泰斗さん、ヴィルフリート役の寺崎裕香さん、ラオフェレーグ役、側近役の朝井彩加さん、ジギスヴァルト役、生徒4役の安田陸矢さん、ナーエラッヒェ役の松嵜麗さん、アドルフィーネ役の近藤唯さんの収録です。

新しいキャストさんは松嵜麗さんと近藤唯さんです。
大勢での収録は掛け合いが多くて、感情の流れがわかりやすくてとても楽しいですね。

収録前に声優さん達が集まる待合室の会話も途切れ途切れに聞こえてきます。マイクが遠いせいもあり、大勢いるとさすがにどんな内容の話をしているのかわかりません。
そんな中で聞こえたのが、「あ~……。それは先生に聞かなきゃわからないかな」というスタッフの声。

少しして「香月さん、質問があるそうですが、いらっしゃいますか?」という担当さんの呼びかけがiPadから聞こえてきました。私はマイクをオンにして「はいはい、いますよ」と返事します。

「ここに直接話しかけてください。あちらに聞こえてますから」
「あ、はい。ヴィルフリート役の寺崎です」

寺崎さんからの質問は「ヴィルフリートって何を考えているんですか?」というものでした。

「オルトヴィーンを応援するところですが、ヴィルフリートはハンネローレの気持ちとか、わかってないんでしょうか? 何を考えて言っているのかわからなくて……」

実は、2巻の書き下ろし短編であるシャルロッテ視点には出ているのですが、ハンネローレ視点で進むweb版やドラマCDの脚本では出ていません。普通の領主候補生では言わないことなので、余計に難しく考えてしまいますよね。

「純粋に友情です。オルトヴィーンを応援したかっただけです」
「友情!?」
「そう。求婚されたわけですから、さすがにハンネローレの想い自体は知っています。でも、自分は結婚できないし、女神の化身となったハンネローレの立場を考えればオルトヴィーンが一番だと、心の底から信じている感じですね」

オルトヴィーンの恋心を応援したいのも本当。仲良しのハンネローレに幸せになってほしいのも本当。大領地の上級文官見習いより、大領地の領主候補生の方が女神の化身の結婚相手に相応しいと思っているのも本当。

「純粋なんですか?」
「はい。周囲の変化を全く理解していない発言なので、周囲の者は迷惑したけれど、ヴィルフリートの意図としては純粋な友情です。裏は全くありません」
「わかりました。ありがとうございます」

寺崎さんが去ると、次はナーエラッヒェ役の松嵜麗さんがやって来ました。

「あの、ナーエラッヒェについても質問してよろしいですか?」
「はい、どうぞ」
「ナーエラッヒェの心情を教えてください。積極的に嫁盗りディッターにいけいけって感じなのでしょうか? それとも、本当は嫌なのでしょうか?」

ナーエラッヒェはジギスヴァルトの第一夫人だからこそ、どういう立場でハンネローレを娶る話の中で意見しているのかよくわからないようです。

「うーんと、領地としてはハンネローレを娶ることが一番大事なんです。可能ならば嫁盗りディッターをせずに穏便に娶ってほしいと思っています。危険ですし……。でも、娶れない方が困るから嫁盗りディッターが必要ならば止めません。心配なので少しでも危険を減らせるように助力しても、娶ること自体は止めませんし、嫁盗りディッターに反対もしません」
「ありがとうございました」

質問が終わるとアフレコ開始です。
まず、以前に収録したジギスヴァルトの声を確認し、初参加であるアドルフィーネとナーエラッヒェの声を作ります。

「先生、アドルフィーネの声はどうですか?」
「問題ありません。これで進めてください」

「先生、ナーエラッヒェの声は大丈夫ですか?」
「えーと、もうちょっと穏やかというかおっとりした感じでお願いします」

少し調整してイメージする声ができたら収録が始まります。

「○ページのジギスヴァルト。元王族なのでもっと優雅な感じでお願いします。悪役が前面に出すぎています」
「×ページのアドルフィーネ。もう少し遠回しな嫌味っぽさでお願いします。ちょっと直接的すぎるというか、きついです」
「△ページのナーエラッヒェ。ドレヴァンヒェルの発音が違うな」
「○ページの早急はそうきゅうと読んでください」
「×ページのジギスヴァルト、ノイズです」

いくつかの修正を終えて、次に進みます。シーンが変わると、出てくるキャラも入れ替わるので、声の確認を行います。

「確認のためにハンネローレさん、ケントリプスさん、ヴィルフリートさん、ラオフェレーグさんの声を出します」

前回収録した声を確認して収録開始したわけですが、すでに慣れた面々なので進みが早いです。

「○ページのヴィルフリート。御すことを御することって言いませんでした?」
「×ページのケントリプス。御力はおちからと読んでください」
「△ページのハンネローレ。魔獣相手はワンワードで」
「○ページのケントリプス。ちょっと動揺を見せすぎですね。『いえ……』から後はもっと落ち着いてください」

ケントリプスはどこまで動揺を声に乗せるのか難しいところです。聞いている方には伝わってほしいけれど、ハンネローレには伝わらないくらいの塩梅にしたいので。
それにつけても、照れるハンネローレとケントリプスの可愛さよ。

「×ページのハンネローレ。すみません。こちらです。もう一度お願いします」
「△ページのラオフェレーグ。やられるアドリブをください」

諸星さんが間違えた時の「ぅえっ!」とか「んあ!?」と一瞬だけ入る反応が可愛いです。
坂さんが「ハイスヒッツェ様」にちょっと苦戦していました。言いにくい名前が多くて申し訳ないです。

「△ページのハンネローレ。すみません。こちらのミスです。『みんな』ではなく『みな』でいただけますか?」
「○ページのハンネローレ。こちらのミスです。『私』とありますが、『わたくし』が正解です。修正お願いします」

こういう脚本のミスは毎回ちょこちょこあるのですが、実際に脚本を読んだ声優さんの判断による修正が入ることも時々あります。

「あれ? ○ページのハンネローレ、『出迎え』って言いましたけれど、『出迎えると』ですよね?」
「あ、そこは次が『下がらせると』なので、ない方がいいと思って……」
「なるほど、確かに。そのまま進めてください」

こういう指摘、めちゃくちゃ助かっています。今後もよろしくお願いします。

「○ページのヴィルフリート。ちょっと流れたな」
「×ページのハンネローレ。『狼狽えた』のイントネーションを先日のコルドゥラと揃えてください」

前編が終了した時点で諸星すみれさん、安田陸矢さん、松嵜麗さんは終了で帰られます。
色紙にサインし、写真撮影をした方から「お疲れ様でした」と声が聞こえてきます。

「ずいぶん早く終わったな。これ、後半を先にできるだろ?」
「できますね」

想定以上にアフレコが早く進んだので、予定を変更して残りの方々で先に後編を収録することになりました。

「○ページのケントリプス。『良い』は『よい』と読んでください」
「×ページのケントリプス。ここ、ちょっと軽いです。探りを入れる感じでお願いします」
「△ページの側近。こちらです。もう一度ください」

ハンネローレがいないと収録するセリフ数が一気に減るので、先程の前編より収録がぐんぐん進みます。

「○ページのアドルフィーネ。後半はもっと柔らかくしてください」
「先生、どうですか?」
「うーん……。違う」

アドルフィーネの勝ち気な一面はよく出ているのですが、求めているイメージと違うんですよね。説明の仕方を色々考えないとダメなやつ。

「まだきつい? これ以上柔らかくなると優しくなっちゃうけど、大丈夫?」
「あ~、それは大丈夫です。むしろ、言ってる言葉自体はちょっと率直できつくても、弟に対する労りとか気遣いが伝わるようにしてほしいです」

お見事。完璧なアドルフィーネになりました。

後編の収録が終わると、「お疲れ様でした」の声が次々と聞こえてきます。
お疲れ様でした。

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