広がるデジタル化の波
― 昨今の電子書籍市場について教えてください。
またTOブックスはその中でどのような立ち位置なのでしょうか?
T.T:年々、市場規模はかなり上方へ推移しています。特に顕著なのがコミックスですね!
元々7~8年前くらいは電子の売り上げは紙の10%くらいしかなかったんですよ。にもかかわらず、4年くらい前から遂に電子の売上が紙の売上を上回りました。TOブックスは書籍の強い出版社ですが、今年の数ヶ月だけ見ても、電子が上回っていますね。
M.K:需要の変化もありますけど、電子書店、媒体の躍進も大きい理由ですよね。
T.T:そうだね、一部の媒体での連載が売上を伸ばしている。連載の売上のほうが単行本売上よりも3~4倍伸びているんじゃないかな。連載時に調子が良い=目立てると単行本が出た際にも伸びるからね。相乗効果があるね。
ある媒体さんには最近CMを打ってもらったこともあり、さらに急速に伸びているね。
M.I:今、連載媒体ってどれくらいあるんでしたっけ?
T.T:媒体にもよるけど、一部の媒体を除いて、多数の媒体はまだそれほど力を入れていないというか追いついていないのが現状かな。大手と言われている媒体ですら、プラットフォームが確立していないところも多い。それだけ難しいんだろうね。
M.K:TOは紙よりも電子が伸びたが業界全体ではどう見えますか?
T.T:業界全体だとまだそうでもないかな。コミックに関しては電子のほうが上だけど、ノベルに関しては特に絵本やビジネス書、実用書、辞書などは電子の媒体では検索が難しいのでまだ時間がかかりそう。やはり紙が主流だね。
M.I:そうですね。
電子営業のお仕事とは
― 電子の仕事はどんなことをされていますか?
M.K:まずTOの場合、営業と納品、二つのチームに配分しています。今はそれぞれ3:3ですね。
T.T:じゃあまず営業から。一言で言えば、各書店さんごとに人気のタイトルを作っていくことに尽きるかな。
書誌や電子用のデータを作って取次から各書店さんに流してもらうってことも大事なんだけど、営業なので、各書店さんや取次さんに対してTOブックスのタイトルをしっかり売り込んで、販売・連載の場をしっかり確保することが前提だよね。
電子の書店が面白いのは書店さんによってそれぞれ客層が全然異なること。とある書店さんは男女比1:1かと思えば、ほかの書店さんは女性の比率が圧倒的に高かったりね。各書店のサービスごとに付いてる読者層が違う。
M.I:書店さんも戦国時代ですよね。
T.T:その中で新シリーズを書店と一緒に育てたり、既刊本の売り上げを伸ばしていくことが大事かな。『本好きの下剋上』や『ティアムーン帝国物語』などの売れ筋は書店も取り上げてくれるが、それまで目立っていなかった作品をピックアップして売れてくれることこそ営業冥利に尽きるよね。
M.K:ちなみにTOブックスの書籍とコミックの男女の比率はどのくらいなんでしたっけ?
T.T:圧倒的に女性ですね。基本動いているのが『ティア』、『穏やか』、『本好き』など女性向けの作品。
女性向けのタイトルのほうが動きがいいのかな。世の中的にも女性向けのほうが強くなってきているよね。
M.I:やはり異世界作品の台頭が理由でしょうか。従来、少年マンガと少女マンガだったら圧倒的に少年マンガが強かったんですけど、異世界作品が増えたことで女性も増えてきたなと感じています。異世界の女性向けだと悪役令嬢ジャンルは特に強いですね。
M.K:では、納品のお仕事はどんな内容なんですか?
M.I:納品のお仕事は、編集の方から書誌をいただいて、電子書籍のデータを納品へ進めるお仕事です。つまり、管理、制作ですね。見落としのないよう細かいチェックが多いので、注意力が求められます。
営業が書店さんとやりとりする外向けのお仕事ならば、納品は社内とのやりとりが多い内向けの役割が多いお仕事と言えるでしょう。
T.T:運用周りや連載のバナーの取扱いも納品チームにお願いしているね。僕たち営業チームが集中して営業出来るのは、M.Iさんたち納品チームの支えありきだから、本当に助かってます(笑)。
M.I:支えています(笑)。
M.I:ちなみに書店営業との違いって何か感じることありますか?
M.K:紙だと新刊当初の初速が非常に大事なんですよ。時間が経過すると、だんだん目立つ場所から遠のいたディスプレイになっていくし、棚差しも増えていく。アニメなどの機会がないとそもそも営業機会がない。
ですが、電子は施策内容ひとつで作品を大きく見せることができるのがとても面白いですね。
M.I:それは全然違いますね。電子はいつでもキャンペーンを組めますもんね。