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香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD9アフレコレポート【後編】

香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD9
アフレコレポート【後編】

【前編】【中編】【後編】

アフレコ2日目

○山下誠一郎さん

コルネリウス役とルーフェン役とアナスタージウス役を演じてくださっています。

以前の声を聴いてから始めます。
まずルーフェンから。
ディートリンデの恰好に困惑している声が良いです。笑

次がコルネリウス。

「○ページ、『アンゲリカ、交代だ』をもう少し勢いよく。前に出てくるように、できる?」
「はい!」

この「前に出てくるように」という音響監督さんの指示に対応できるんですよ。声優さんはすごいです。
コルネリウスは「はっ!」とか「ゲッティルト!」とか基本的にセリフが短いのでサクッと終了しました。

それからアナスタージウスです。
山下さんが演じた中では一番セリフが多いのがアナスタージウスですね。講堂へ呼びつけられ、ラオブルートと対峙し、中央神殿へ付き合わされるエグランティーヌ一筋の王子様。

「○ページ、『ローゼマインだと!?』はそこまで叫ぶ必要はないかな」
「×ページ、『ツェントを』を『ツェントに』に修正してください」
「△ページ、『奉納舞』は『ほうのうまい』と読んでください」
「□ページ、もっと切羽詰まった感じを出してください」
「○ページ、『御座す』は『おわす』と読んでください」

そうそう、ドラマCDにはメダル破棄の際にアナスタージウスが唱える呪文が全文出ています。アナスタージウスが授かった闇の神の名前が出るのは多分ここくらいですね。
気になる方はぜひドラマCDで確認してください。

最後にモブの騎士4もお手伝いいただいて終了です。

「お疲れ様でした。良いお年を」

○潘めぐみさん、梅原裕一郎さん、石見舞菜香さん

潘めぐみさんはディートリンデ役とクラリッサ役、梅原裕一郎さんはマティアス役、石見舞菜香さんはヴァイス役とブリュンヒルデ役を演じてくださっています。

まずはそれぞれの声を確認してから収録スタートです。

「○ページ、『新しいアウブ』がちょっと聞き取りにくいです」

ディートリンデは最後まで元気に叫んでいましたが、エックハルトに気絶されられて、ユストクスに引っ張られて強制退場。
細かい修正はありましたが、セリフは少ないのであっさり終わりました。

前編から順番に収録していくため、ディートリンデとクラリッサが交互に出てくることもあり、潘さんは混乱しないのかな? と不思議に思いながら聞いていました。

マティアスはちょっとセリフが増えています。
実は、ドラマCD後編のプロローグは最初ローゼマイン視点で書かれていました。でも、やっぱり他者視点の方が『本好き』らしいじゃないですか。そこで私がローゼマイン視点をマティアス視点に直して護衛騎士達のセリフを少し増やしました。

「○ページ、もうちょっと驚きを出してください」

マティアスファンの方はお楽しみに。

図書館のシーンになると出てくるシュバルツとヴァイス。
石見さんのヴァイスは相変わらず可愛いです。個人的には収録の時に本渡さんのシュバルツと二匹揃えて聞きたいところです。
可愛いけれど、特に引っかかるところがないので収録はすぐに終わります。

最後に女神の御力に満ちたローゼマインを見たブリュンヒルデのセリフ。
一言ですが、側にいる者達からの言葉がないとどういう状態になっているのかローゼマインが自覚できないので大事です。

「お疲れ様でした。良いお年を」

○玄田哲章さん

玄田哲章さんは新しいキャストですね。
ジェルヴァージオ役を演じてくださいました。

キャストが決まった時に旦那が「え? 玄田哲章さん? え? マジで?」とメールを二度見、三度見する姿から「すごい方なんだな」と思っていたのですが、実際、すごかったです。
正直なところ、速水さんのフェルディナンドに勝てる声ってどんな感じだろうと思っていたのですが、納得です。「これは速水さんのフェルディナンドにも勝てる」と思いました。キャスト担当さんの腕前が相変わらずお見事。

玄田さんは声だけなのに、強い。キャラの説明が「ランツェナーヴェの王」のせいもあり、めちゃくちゃ威厳のある声です。

「○ページ、離宮の発音を他の人と合わせてください」
「×ページ、皆に向けて言うのではなく、ラオブルートに向かっていう感じに。距離があるので、それを意識してくださると……」
「△ページ、若干呆れた感じを入れてください」

いつも通りこちらからの要望もありますが、今回は玄田さんからの質問も多かった印象です。

「この『グルトリスハイト』ってどういう気持ちで言うセリフ?」
「えーと、王の証を見せる呪文なので、水戸黄門の印籠を見せるような気持ち……?」

「祭壇の上ってどういう流れで? なんで突然そんなところに出てくるの?」
「それを短く説明するのは難しいですね。神様と対話できる場所から出てくると、祭壇の上になる……でわかりますか?」
「この『さっさと魔石になれ』は?」
「えーと、えーと……」

途中から入ると、それまでの流れや前提がわからないので難しいなと思いました。英知の女神の降臨辺りとか、メダルを破棄されて突然シュタープが消えた辺りとか、何が起こっているの? となりますよね。
30巻以上かけて積み重ねてきた設定を今回のドラマCDの脚本だけでは理解できないし、説明するのも大変だな、と。

でも、「こういう感じで」「こういう流れなので」「こういう設定があります」と説明すると、バシッと合わせてくださる様子が本当にベテランさんのお仕事で素晴らしかったです。

フェルディナンドの「今すぐ滅べ」 vs ジェルヴァージオの「さっさと魔石になれ」!
お楽しみに。

○金元寿子さん

玄田さんに続いて新しいキャストです。
金元寿子さんはアルステーデ役を演じてくださいました。

「まずは声を作ろうか」

アルステーデはイメージ通りの声で言うことなし。特に怯えた空気感の出し方が素晴らしいですね。あのフェルディナンドに睨まれて、本当に可哀想で可愛い感じになりました。

「○ページ、こちらのミスです。『開かれたた』になっていますが『た』を一つ消してください」
「×ページ、『良い』は『よい』でお願いします」
「△ページ、悲鳴ではなく、息が止まる感じの苦しさを出してください」

いくつか修正していただくくらいで、特に問題なく収録は終わりました。

「お疲れ様でした。良いお年を」

○小西克幸さん

小西克幸さんはエアヴェルミーン役を演じてくださいます。

前回収録した声を確認してから収録開始。

「○ページ、テストの時より強いです。もう少し線の細い感じにしてください」
「×ページ、『身食い』の読み方が違いません?」
「△ページ、前半にもう少しだけふわっとした感じが欲しいです」

テンポというか、ふわっとしていて揺蕩うような抑揚が最高だと思います。
エアヴェルミーンの人ではない存在らしさが上手いんですよね。

小西さんにはモブの騎士2もご協力いただきました。
こちらは途端に力強い声になります。切り替えがお見事。
お疲れ様でした。

○井口裕香さん、速水奨さん(後編)

井口裕香さんはローゼマイン役とメスティオノーラ役、速水奨さんはフェルディナンド役です。

本日は後編だけですが、前編よりセリフ数は多いかもしれません。めちゃくちゃ長いです。

「○ページ、『領主一族』はワンワードで」
「×ページ、『様抜け』です」
「△ページ、『思う浮かべ』は『思い浮かべ』に修正してください」
「□ページ、もっと焦った空気が欲しいです。早口になる感じにしてください」

井口さんと速水さんは『本好き』の収録に慣れているので、脚本に合わせてどんどんと収録していきます。そのため、新キャラになるメスティオノーラの声を作るのも、最初ではなく登場シーンが近付いてからです。

「先生。メスティオノーラ、こんな感じでどうですか?」
「うーん、声はそのままで良いけど、話し方を女神らしくしてほしいんですよね。今はすごく人間……」
「女神らしくってどんな……?」

音響監督さんの怪訝そうな声に、私は「えーと……」と言語化を頑張ります。

「テンポとか存在感がふわっと軽そうな感じで……あ、さっきのエアヴェルミーンに寄せていただけると良いと思います」
「なるほど。エアヴェルミーンのセリフ、すぐに出そう?」
「出します」

井口さんにエアヴェルミーンのセリフを聞いてもらい、それに寄せる感じで演じていただきました。

速水さんは長いセリフやカタカナの名前が多くて大変そうでした。時には「あぁ~」と唸りながら何度も言い直している姿も……。
細かい修正はありましたが、ジェルヴァージオと対峙する冷ややかさとか、メスティオノーラとのやりとりとか、アナスタージウスを顎で使う感じとか、イメージ通りです。

フェルディナンドの貴族らしさが剥がれて怒鳴るシーンとか、戦いが終わった後に交わされるローゼマインや領主一族とのやり取りとか、フェルディナンドファンの方にとってのお楽しみはたくさんあります。

「今日はあれだな。もう会わないな?」
「会いませんね」
「よし。良いお年を」
「ふふっ……。良いお年を」

○上田燿司さん、岡井カツノリさん、遠藤広之さん、坂泰斗さん

上田燿司さんはアウブ・ダンケルフェルガー役とシュトラール役、岡井カツノリさんはラウレンツ役と若いラオブルート役とカーティス役、遠藤広之さんは若いジェルヴァージオ役とメルギルト、坂泰斗さんはダンケルフェルガーの騎士2を演じてくださっています。

上田さんは先にアウブ・ダンケルフェルガーの声を確認して収録開始です。

「○ページ、『おられぬ』ではなく『おらぬ』です」

渋くてどっしりとしていてカッコいい声のアウブによる「シュタイフェリーゼより速く!」が胸にグッときました。

収録の途中で上田さんはシュトラールの声を、岡井さんはラウレンツの声を確認します。
そのキャラは特に問題なく進みました。

前編の終わりに出てくる回想シーン。
ここに若いラオブルートと若いジェルヴァージオが登場します。

「次。声を作ろうか。若いラオブルートと若いジェルヴァージオ」

岡井さんに若いラオブルートを、遠藤さんに若いジェルヴァージオをお願いします。
それぞれのキャラに寄せた若い声が必要になります。

「先生、どうですか?」
「えーと、ジェルヴァージオはもうちょっと若くしてください。ラオブルートは年齢が結構変わるので、その点に注意してください。先のセリフはもっと若めでお願いします。後ろのセリフは今くらいでOKですが、もっと騎士らしさが欲しいです。今のままではラオブルートなのにちょっと文官っぽいので」

いくつか修正をお願いして、声ができたら収録です。
声さえできれば、特に問題なく収録は進みます。

後編のマティアス視点のプロローグではラウレンツのセリフもちょっと増えました。
ラウレンツファンの方はお楽しみに。

遠藤さんのメルギルトの声を作ります。メルギルトはアナスタージウスの護衛騎士で、先日勝木先生が第四部コミカライズでキャラデザしてくださいました。

「先生、メルギルトの声はどうですか?」
「うーん、今だと35手前くらいに聞こえるのでもっと若く……30手前になる感じでお願いします」

メルギルトは第四部Ⅰの時点での年齢設定が25歳なので、第五部Ⅹでもまだ30歳になっていないはず。
年齢を下げていただいて完成です。
収録自体は問題なし。

「次は岡井さん。カーティスの声を」
「はい」

カーティスは特に問題なく声ができました。

「○ページ、カーティスには仕える感じが欲しいです。フランみたいな? ここに黒い企み感はいりません」
「×ページ、『メダルが』を『メダルで』に修正してください」

四人は騎士や神官など、モブもたくさん演じてくださいました。

上田燿司さんが騎士1、青色神官1
岡井カツノリさんがダンケルフェルガーの騎士1
遠藤広之さんがランツェナーヴェの捕虜、騎士5、青色神官4
坂泰斗さんはダンケルフェルガーの騎士2、敵の騎士、青色神官2

モブだけではなく、ガヤの収録もお願いしています。

「○ページ、『否』は段々テンションを上げていって」
「×ページ、水に溺れる騎士達のアドリブください」
「△ページ、どよめく騎士達をください」
「□ページ、逃げ惑う神官達の悲鳴をお願いします」

騎士達の声を収録する際には、大勢いる感じを出すために年齢層高めと若い感じで声を変える様子が面白かったです。

「はっ!(騎士達の返事)」
「今のを若めでください」
「はっ!」

音響監督さんから指示が出たら、おっさんばかりの空気が途端に若者の爽やかボイスで青春っぽくなるんですよ。戦場から部活の空気になる感じ。これを上手く混ぜて大勢の騎士がいる様子を出すのです。そこは音響さん達のお仕事ですね。

「以上です。お疲れ様でした!」

そうそう。今回の収録での気付いたこと。
「いつの間にか、私、ある程度年齢イメージを声で聞き分けられるようになってる!」
最初は意見を求められてもポカーンだったことにも、今は悩みつつ普通に返事ができているんですよ。すごくないですか?
積み上げてきた経験と自分の成長に気付いて、ちょっと嬉しい収録でした。

【前編】【中編】【後編】

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