2023年12月9日発売!
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香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD10アフレコレポート【その1】

香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD10
アフレコレポート【その1】

【その1】【その2】【その3】【その4】

2023年某月、ドラマCD10のアフレコが行われました。

今回のアフレコもリモートです。キャストが多いため、4日に渡って行われました。
1日目と2日目のアフレコの時、私は帰省中&旅行中でした。そのため、家族が観光に行っている間、私一人だけ実家やホテルでiPad&台本と睨めっこしていました。

このドラマCD10は第五部ⅩⅡと同時発売です。最終巻である第五部ⅩⅡでは本編の書き下ろしが非常に多いため、一通り原稿ができてからドラマCDの脚本を作ることになりました。当然のことながら発売日よりかなり早い時期に原稿を上げる必要があり、私は必死に書き上げました。

全力を尽くした結果、脚本担当の國澤さんからはいつも通りの悲鳴が上がっていました。

「エピソードが多くて入り切らないんですけれど!」
……知ってた。本編が増えてるからね。

原稿を読んだ國澤さんからのお願いは「婚約式の誓いの言葉を全文ください」でした。書籍もweb版に比べると少しだけ増やしたけれど、全文を入れようと思うとどうしてもテンポが悪くなるし、神様がずらずら出てくる貴族言葉の解釈も入れられないため省略しています。

「うーん、全文だと長すぎるのでドラマCDも抜粋で十分だと思います」

書籍にはほんの一部、ドラマCDの方が多いけれど、こちらも抜粋です。全文は短編集Ⅲまでお待ちください。その代わり、フェルディナンドの意図とエルヴィーラ達の解釈に違いがある点までじっくり書こうと思っています。

そんな感じで書籍よりドラマCDの方が膨らんでいるエピソードもいくつかあります。ぜひ、書籍とドラマCDの両方を堪能していただきたいですね。

ドラマCDのおまけSSはエーファ視点「マインの帰宅」。書籍のエピローグの後で交わされた下町家族の会話です。こちらは書籍やドラマCDを楽しんだ後で読んでいただけると一番かなと思っています。

今回は回想シーンがあるので懐かしい面々の出番が多く、キャストの数は過去最多。個人的に回想シーンの一言のためにアニメのキャストに来ていただいたのが贅沢の極みだと思っています。回想シーンはもちろんのこと、アニメの頃に比べて成長した面々をお楽しみに。

<アフレコ1日目>

「観光に行ってくるけど、本当に一人で大丈夫?」
「平気、平気。リモートのアフレコ、何回目だと思ってるの?」

そんな自信満々に交わした旦那との会話がフラグだったなんて、家族を送り出した時の私は思わなかったわけですよ。

「え? いつものページと違う? 待って。これで合ってる? わ、わかんない。どうやって自分の顔を消すんだっけ? これで入ればいいの? ちょ、誰か……」

周りを見回しても相談できる相手は誰もいません。リモートの会議室というか、集合場所がいつものところではないだけでオロオロする私。色々と探して、触りまくります。

「これかな? ……あ、よかった! 入れた!」

何とか入れたのはアフレコが始まる直前、本来の集合時間からは若干遅刻気味という時間でした。「香月先生、大丈夫ですかね?」「そろそろ電話した方が……」みたいな会話がされていました。すみません。ご心配をおかけしました。

○石見舞菜香さん

石見舞菜香さんはブリュンヒルデ役、リーゼレータ役、フィリーネ役を演じてくださっています。

まずはブリュンヒルデから収録。以前に収録した音源を確認してから始めます。
確認に使用されるサンプルが初期のものなので、アウブの婚約者として考えるとかなり声が幼いです。

「すみません、その音源から2~3歳上げてください」
「はい」

ところが、収録が始まるとコントロールルームの音声は聞こえるけれど、スタジオの声が聞こえないトラブルが発生。

「すみません。ところどころ音が途切れて、途中から完全に消えました」
「えっ!? どこが切れたんだ?」
「ここまでは繋がってます」
「あっち確認してみます!」

機材調整のために一旦中断。音響さん達がバタバタと色々なところを確認して回る音が聞こえてきます。

この間、私は「突然のマシントラブルに対応できるの、すごいなぁ」とiPadの向こうで感心しながら待機していました。リモートの集合場所がいつもと違うだけでアワアワしていた私とは大違いですよ。

無事に繋がったことを確認できたら収録再開です。

「先生、さっき収録した声を流します」
「了解です。……特に問題ないです。これで進めてください」

ブリュンヒルデはアウブの婚約者としてエーレンフェストに残るため、今回は出番も台詞も少ないです。でも、少ない台詞の中で彼女のしっかりした性格がよく伝わってきていいですね。

次はリーゼレータです。
リーゼレータも最初に声を確認します。サンプル音源が前回収録した声だったので、こちらは年齢感の変更なく収録を始めました。

「○ページ、こちらのミスです。『に』を削除してください」

リーゼレータは側仕えとしてローゼマインと行動しているので、ちょこちょこと台詞があります。

最後にフィリーネ。
声を確認して、少し年齢調整をしてから収録開始です。

「ここは主の旅立ちを見送る祝詞なので、もっと祝詞らしさを出してください」
「祝詞か……。前後があればやりやすいけど、トップバッターなんだよな」

最初ということで少々説明に苦労しつつ、収録は終了です。

石見さんは同性で同世代のキャラを3人も担当しているのに、全て違った感じに演じられるのがすごいと思います。
性格がきつめと穏やかとか違いがあれば演じ分けもかなり楽になるはずですが、リーゼレータもフィリーネも穏やか系なのに……。

収録が終わると、写真撮影とサインをお願いします。

「お疲れ様でした」

○関俊彦さん

関俊彦さんはユストクス役を演じてくださいます。
今回は兼ね役がありませんでした。珍しいですね。

「○ページ、最初はテンションを上げてください。古代魔術に興奮している感じをお願いします」

ユストクスは古代魔術の復元シーンで礎の間から出てこない主達を心配するシーンがとても良かったです。それまでの興奮具合との落差がとてもユストクスらしいと思います。

○茶風林さん

茶風林さんはビンデバルト伯爵役を演じてくださいました。
これには音響さん達がめちゃくちゃビックリしていましたね。

「長台詞でもない、回想シーンの1ワードのために茶風林さんを呼ぶのか……」
「贅沢すぎだろ?」

……それはそう。

メールで相談があったんですよね。ドラマCDとアニメで同じ声優さんを揃えているけれど、回想シーンは別の方に兼ね役をお願いするかどうか。

ベストはアニメで演じてくださった方にお願いする。ベターは特徴的でとても兼ね役をお願いできない方だけアニメのキャストさんにお願いする。最後は回想シーンで特に台詞は多くないので全て兼ね役をお願いする。

私はあまり耳が鋭くないので兼ね役でも特に気にならないのですが、気になる方は気になるかもしれません……とお返事したところ、ベストの状況で収録されることになりました。
それが決まった時の私の心境。

……マジで全員呼んじゃうのか。私はありがたいけど、呼ばれるキャストさんは良いの?

そんな流れで、茶風林さんにはたった1ワードのために来ていただきました。

アニメの声を確認して収録開始です。
たった1ワード。でも、本人の声はさすがですね。他人には出せないビンデバルト伯爵らしさがありました。

○前野智昭さん、梅原裕一郎さん

前野智昭さんはマルク役、梅原裕一郎さんはダームエル役、マティアス役、ジギスヴァルト役とジフィ役を演じてくださいました。

「二人して同じ感じの服だな」
「仲良しっぽいですね」

リモートなので私からは見えないのですが、コントロールルームから聞こえてくるそんな声で微笑ましい気持ちになりました。

まずはジギスヴァルトの声の確認から始めます。

「○ページ、もっと自信満々な空気が欲しいです」
「先生、ここのガヤの男女比は?」
「男女共に5,6人です」

王族との話し合いのシーンでグルグルにされるジギスヴァルトにぜひご注目ください。

ここでも音声が一度途切れ、繋ぎ直しが行われました。
なんか機材の調子が悪いようです。今までのアフレコでは起こらなかった事態なので、ちょっとビックリ。

調整が終了したらマティアスの声の確認をして、収録の開始です。
マティアスは何も言うことがなく終わりました。

次はジフィの声を作ります。
特に問題なし。
平民の荒っぽい漁師らしい声になりました。

ダームエルの声は特に確認なく進めようとしたのですが、梅原さんから声がかかりました。

「ダームエルも声の年齢を上げた方が良いですか?」
「そうですね、周りが上がっているので少し上げてください」

声の調整をしたら収録開始です。

「○ページ、もっと祝詞っぽく。今のままだとただの台詞だから」
「はい」

前野さんの出番です。
マルクの声はアニメがサンプル音源です。
けれど、今回の収録はエピローグ部分なので年齢を上げてもらいます。

「すみません。そのアニメの時間軸から5~6歳は年齢を上げるイメージでお願いします」
「先生、こんな感じでどうですか?」
「うーん、もうちょっと上げてください」

エピローグ用の声が完成です。マルクさんが更に素敵紳士になりました。
声ができたら収録自体は早いんですよね。
サクッと終了です。

○小西克幸さん

小西克幸さんはエアヴェルミーン役、漁師2の役を演じてくださいました。

以前の声を確認してエアヴェルミーンから収録開始です。

「全体的にもうちょっと線の細い感じというか、抑揚に揺蕩う感じのふわふわした空気が欲しいです」
「○ページ、『ふむ』が聞こえにくかったです。ここは流さず、入れてください」

エアヴェルミーンの収録が終わったら漁師2、ちょっと柄の悪い海の男のイメージです。
台詞も少ないので、特に問題なく終わりました。

それにしても、エアヴェルミーンの声って小西さんの地声や漁師の声と全然違うんですよね。声優さんはすごいなぁと改めて思いました。

「お疲れ様でした」

小西さんが写真撮影やサインを終えて帰られると、私達は次の方が到着するまで30~40分の休憩です。
その間にスタジオの変更があったようです。
「早くいつものスタジオに行きたい」
「前の収録、まだ終わらないの?」
そんな声が聞こえてきました。なるほど。本日のマシントラブルが多めなのは、いつもと違う環境だからかもしれません。

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