|【その1】|【その2】|【その3】|【その4】|
<アフレコ2日目>
本日、私はホテルでリモートアフレコです。 旅行計画よりアフレコの予定が後に決まったので仕方がありません。観光に出かける家族を見送り、iPadと向き合います。 二度目なので、慌てることも遅刻することもなく無事にリモート会議室に入ることができました。
○小林裕介さん、本渡楓さん、長縄まりあさん、岡井カツノリさん、竹内想さん
小林裕介さんはエックハルト役とギャラリー5役、本渡楓さんはシャルロッテ役とアンゲリカ役、長縄まりあさんはグレーティア役とメルヒオール役、岡井カツノリさんはラウレンツ役とギャラリー男1役、竹内想さんはディード役と下働き役を演じてくださっています。
まずはギャラリーの収録から始まりました。継承の儀式や婚約式を盛り上げてくれるギャラリー達です。
「ギャラリーは台詞だけな。ガヤは後でお願いします」 「はい」
十代後半から五十代くらいでさまざまな年齢層になるようにお願いしました。 皆様、担当しているキャラと全然違う声が出せるのがすごいですよね。
ギャラリーの収録が終わったら、エックハルト、グレーティア、ラウレンツの声を確認して前編の収録を始めます。
「○ページのグレーティア。もっと控えめにしてください。明るくて元気が良すぎます」 「×ページ、『良い』は『よい』と読んでください」 「△ページのエックハルト、もっとスパッとローゼマインの意見を切り捨てる感じでお願いできますか?」
一通り前編の台詞を取り終えると、次はガヤの収録です。 背景にいる大勢の声を出してもらうわけですが、それを更に多く見せるために男性に一歩出てもらって男性の声を強めに録ったり、女性に半歩前に出てもらったりして何度か録った分を重ねるそうです。
「うーん、婚約式のどよめきや悲鳴はもっと女性が集まる時にも頼むか」 「さすがに二人だけでは限界がありますからね」
周囲のガヤガヤしている声、歓声、悲鳴、どよめき、〆はビシッと揃えて「神に祈りを!」(笑)
皆で声を合わせる時は誰かが「せーの」と声をかけて、それから全員が台詞を言うのですが、今回はちょっと新鮮なやり取りがありました。
「誰が言います?」 「あの『せーの』、超下手なんで、誰かお願いします」
……そういうのも下手とか苦手とかあるんだ。
感情を乗せたり、他者と声を合わせたりできるのに、掛け声が苦手ということが私にとっては新鮮な驚きでした。
ガヤの収録を終えたら、後編の収録です。
「後編いきます。ディードの声、確認してください」
ディード役の竹内さんも回想シーンのために来ていただきました。アニメの声が流れ、 ディードの声が流れます。 アニメの収録と台詞もほぼ同じせいか、特に問題なく収録終了。「ほれ、帰るぞ、バカ息子」の台詞に含まれる優しい響き、良いですよね。
「次。エックハルトとアンゲリカ」
エックハルトとアンゲリカはピッタリに声を合わせて言う台詞がありましたが、それが テストでバッチリ。
「今の、すごく上手くいったから本番もよろしくね」 「そこまで言ったら、逆にプレッシャーですよ」
プレッシャーになると思われましたが、小林さんと本渡さんはバッチリ決めてくださいました。さすが!
「次はシャルロッテとメルヒオールか。シャルロッテの確認のために前の声を出すけど、それより年齢を上げて」 「わかりました」
シャルロッテの声を確認したら、次はメルヒオールの声を作ります。 何となくエーレンフェスト防衛戦の後の祝勝会で出ているような気がしていたので初出と思えず、何度も以前のドラマCDのキャスト欄を確認してしまいました。 長縄さんの少年声ってどんな感じだろうと思っていましたが、少年らしい声で特に問題なしです。
「お疲れさまでした」
たくさんのガヤ収録、ありがとうございました。
○田村睦心さん、小山剛志さん、豊口めぐみさん
田村睦心さんはルッツ役、小山剛志さんはギュンター役、豊口めぐみさんはジークリンデ役を演じてくださいました。
まずはジークリンデの収録から始めます。 以前の声を確認してから収録開始です。
「○ページ、もうちょっと驚きを入れてください」
ジークリンデは前編だけの出番なので、先に収録を終えて写真を撮影すると、豊口さんは帰られました。
「お疲れさまです」
ルッツとギュンターは後編だけの出番です。 二人も声を確認してから始めます。
「○ページのギュンターはもっと驚いてほしいです」
回想シーンを終えたら、エピローグです。 エピローグでは年齢が違うのでルッツには変更をお願いします。ギルの声を聞いてもらって、ある程度合わせてもらう感じですが、ドラマCDで成長しているルッツの声も何度かしていただいているので特に問題なく進みます。 あ、ギュンターの声は特に変更なし。音響監督さんが「じじいになりすぎたら困るからな」と言ったからです。それはそう。
懐かしい面々によるやり取りがルッツのナレーションで進みます。
「○ページ、修正漏れです。『ベンノの旦那』は『旦那様』に修正してください」 「×ページ、『開いた』は『ひらいた』で読んでください」
エピローグでは下町家族&プランタン商会の面々で次々と発言するキャラが変わるせいか、ギュンターは台本で次の台詞を探している内に迷子になったようで……。
「今、○ページですよ」 「おぉ」
こそっと小声でルッツがギュンターに教えている様子が微笑ましかったです。
「お疲れ様でした」
これでアフレコ2日目が終了です。 ホテルでのリモートアフレコは慣れない環境でしたが、無事に終了してホッとしました。
<アフレコ3日目>
「鈴華さん、お誕生日おめでとうございます。ちょっとズレていますが……」 「え? あ、ありがとうございます」
そんな会話をした後、収録開始です。
○星野充昭さん
星野充昭さんは前神殿長役と前アウブ・エーレンフェストを演じてくださいました。
えぇ、星野さんにも回想シーンのために来ていただきました。 アニメの声を聞いてもらって収録開始です。
「○ページ、慈悲のアクセントが違いますね」 「すみません。もっと上から目線というか、偉そうにしてください。傲慢さが欲しいです」
前神殿長が終わったら、前アウブ・エーレンフェストです。初出なので声を作るところから始めます。
「前神殿長より若い?」 「そうですね。40代前半でお願いします」
それだけの指定で声を作っていただけるんです。すごいですよね。 穏やかで抑揚が少なめの先代領主になりました。いい声です。
すんなりと声を作れたせいか、予定よりかなり早く終わりました。
○上田燿司さん
上田燿司さんはアウブ・ダンケルフェルガー役、シュトラール役、漁師1を演じてくださっています。
「おはようございます!」 「悪いけど、すぐに入れる?」 「大丈夫です」
先の星野さんの収録が早々に終わっていたため、集合時間より早めに到着した上田さんは一息吐くこともできないまま、すぐにスタジオに入ることになりました。
私も台本とペンを手に取ります。
ところが、収録を始めて以前の声を確認しようとしたところ、スタジオ内に音が響いているという指摘が上田さんから入りました。
「スタジオに響いてる? 今度は何の不調だ?」 「今回は本当にマシンの調子が悪いな」
そんな声を漏らしながら調整に入る音響さん達。 私にできるのはiPadの前で応援することだけです。頑張れ。
調整が終わったら、アウブ・ダンケルフェルガーの収録です。 声を確認して、特に問題なく終わりました。
次に漁師1。 「これは若い感じでお願いします」 そんな注文に応えて、若々しい漁師の声になりました。
最後にシュトラールの収録です。 以前の声を確認してから始めます。
「あれ? 何となく前の声より若くないですか?」 「今のだとちょっと若く聞こえたから、少し年齢を上げてくれる?」 「○ページ、感情を乗せた台詞じゃなくて、もうちょっと報告っぽい感じでお願いします」
そんな感じで収録は終わり、写真撮影やサインにご協力いただきます。
○井上和彦さん
井上和彦さんはジルヴェスター役を演じてくださっています。
「じゃあ、前の声を流します」
少し声の確認をしたらすぐさまテストもなく収録開始です。
「録りながらいきます」 「はい」
さすがベテラン。「ちょっと声が籠もった」などの修正があったくらいで、ささっと終了。 井上さんは本当にいつも終わるのが早いです。
○折笠富美子さん、中島愛さん、狩野翔さん、遠藤広之さん、都丸ちよさん
折笠富美子さんはエーファ役、中島愛さんはトゥーリ役、狩野翔さんはフラン役、遠藤広之さんはローデリヒ役とギャラリー男2、都丸ちよさんはデリア役とベルティルデ役を演じてくださいました。
ギャラリー男2やガヤの収録から始まりました。
「ほぅ……はもっと聞こえるように」 「何事って、もっと驚きを込めてくれる?」 「男性陣、『ふむ』とか『うむ』はもっと声を出して」
そんな感じで継承の儀式や婚約式のガヤを収録していきます。以前のガヤ収録では女性が少なかったので、今回は婚約式で華やいだ声を上げる女性陣も増していきます。
「先生、婚約式の女性陣はやりすぎですかね?」 「……うーん、面白いからいいんじゃないですか? 貴族らしく感情を抑えるとドラマCDでは全然伝わりませんし……」
媒体の違いって結構大きいですよね。以前にアニメのアフレコで「絵があるから声にそこまで演技を入れなくて良い。わざとらしくなる。もっと普通に」と監督さんが指示していましたが、「なるほど」って思うんですよね。声だけで聴くドラマCDと文字を目で追う小説では台詞回しも変更しなければ伝わりにくいです。
「ガヤは終了です。それぞれ録っていきます。……後編からで良さそうか?」 「いえ、ローデリヒが前編にいますよ。側近が返事をするところ」 「あ、ここか」
台本では台詞の上にキャラ名が書かれているのですが、そこが「ローゼマインの名捧げ側近」になっていて、注釈としてキャラ名を書かれていると個別収録の時にはどうしても忘れられがちになります。パッと見る時は台詞の上のキャラ名を探すのでどうしても目に留まり難いんですよね。
その側近達の返事しか前編にローデリヒの出番はありません。 声の確認をして「はっ!」だけを録ったら後編です。
エーファとトゥーリはアニメの声を確認し、回想シーンから収録開始です。
「○ページのエーファ、もう少し強めの口調で。神殿長に当たるように」 「×ページのトゥーリ、もっと涙声でお願いできますか?」
アニメに合わせる感じで多少の修正をお願いして回想シーンは終了です。
「フラン、ギルが先に録ってるから、それを聞いてから、そっちで号令をかけて合わせてくれる?」 「はい」
神殿の側仕えが全員集合しているシーンなので、他の方々にも手伝っていただきます。 フランの号令で声を合わせて……。
「せーの、『おかえりなさいませ、ローゼマイン様』」
フランが迎えてくれる神殿はやっぱり良いね。
それからデリアのアニメの声を確認します。デリアは第五部ⅩⅡの書き下ろし部分に出てきます。
「デリアはアニメから年齢を上げてください。15~16歳のイメージになるように」 「先生、どうですか? まだちょっと幼い?」 「そうですね。……でも、まぁ、許容範囲内です」
デリアから離れすぎると全然わからなくなりますから。
次はベルティルデの声を作ります。 ベルティルデはブリュンヒルデの妹でローゼマインの側仕え見習いですが、仕える期間が短いせいもあり、今回がドラマCD初登場です。
「先生、どうですか?」 「ちょっと年上過ぎますね。10歳なので、もっと年齢を下げてください」
可愛いベルティルデの声になりました。
「○ページ、ユー『ゼ』ライゼって言ってません? ユー『ゲ』ライゼです。他のキャラの声を聞いて、祝詞っぽくしてください」
ベルティルデが終わると、エピローグの収録です。
「次、エーファとトゥーリ。年齢を上げて。エーファは上げすぎに注意な」 「トゥーリの年齢感はルッツの声と合わせてもらったらどうですか?」
中島さんには収録済みのルッツの声を聞いてもらい、トゥーリの年齢感を揃えてもらいます。
「○ページ、悪いけど、ここはギュンターと合わせて」 「あ……え……その……んー……」 「これに合わせるんですか?」
笑っちゃうんですよね。わかります。
「○ページのトゥーリ、悲壮感がありすぎません? ルッツとテンションを合わせてもらった方がいいんじゃ?」 「×ページのエーファ、『フィ』ルディナンドって言った。『フェ』ルディナンドな」
いくつか修正してもらって終了です。
香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD10
アフレコレポート【その3】
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<アフレコ2日目>
本日、私はホテルでリモートアフレコです。
旅行計画よりアフレコの予定が後に決まったので仕方がありません。観光に出かける家族を見送り、iPadと向き合います。
二度目なので、慌てることも遅刻することもなく無事にリモート会議室に入ることができました。
○小林裕介さん、本渡楓さん、長縄まりあさん、岡井カツノリさん、竹内想さん
小林裕介さんはエックハルト役とギャラリー5役、本渡楓さんはシャルロッテ役とアンゲリカ役、長縄まりあさんはグレーティア役とメルヒオール役、岡井カツノリさんはラウレンツ役とギャラリー男1役、竹内想さんはディード役と下働き役を演じてくださっています。
まずはギャラリーの収録から始まりました。継承の儀式や婚約式を盛り上げてくれるギャラリー達です。
「ギャラリーは台詞だけな。ガヤは後でお願いします」
「はい」
十代後半から五十代くらいでさまざまな年齢層になるようにお願いしました。
皆様、担当しているキャラと全然違う声が出せるのがすごいですよね。
ギャラリーの収録が終わったら、エックハルト、グレーティア、ラウレンツの声を確認して前編の収録を始めます。
「○ページのグレーティア。もっと控えめにしてください。明るくて元気が良すぎます」
「×ページ、『良い』は『よい』と読んでください」
「△ページのエックハルト、もっとスパッとローゼマインの意見を切り捨てる感じでお願いできますか?」
一通り前編の台詞を取り終えると、次はガヤの収録です。
背景にいる大勢の声を出してもらうわけですが、それを更に多く見せるために男性に一歩出てもらって男性の声を強めに録ったり、女性に半歩前に出てもらったりして何度か録った分を重ねるそうです。
「うーん、婚約式のどよめきや悲鳴はもっと女性が集まる時にも頼むか」
「さすがに二人だけでは限界がありますからね」
周囲のガヤガヤしている声、歓声、悲鳴、どよめき、〆はビシッと揃えて「神に祈りを!」(笑)
皆で声を合わせる時は誰かが「せーの」と声をかけて、それから全員が台詞を言うのですが、今回はちょっと新鮮なやり取りがありました。
「誰が言います?」
「あの『せーの』、超下手なんで、誰かお願いします」
……そういうのも下手とか苦手とかあるんだ。
感情を乗せたり、他者と声を合わせたりできるのに、掛け声が苦手ということが私にとっては新鮮な驚きでした。
ガヤの収録を終えたら、後編の収録です。
「後編いきます。ディードの声、確認してください」
ディード役の竹内さんも回想シーンのために来ていただきました。アニメの声が流れ、
ディードの声が流れます。
アニメの収録と台詞もほぼ同じせいか、特に問題なく収録終了。「ほれ、帰るぞ、バカ息子」の台詞に含まれる優しい響き、良いですよね。
「次。エックハルトとアンゲリカ」
エックハルトとアンゲリカはピッタリに声を合わせて言う台詞がありましたが、それが
テストでバッチリ。
「今の、すごく上手くいったから本番もよろしくね」
「そこまで言ったら、逆にプレッシャーですよ」
プレッシャーになると思われましたが、小林さんと本渡さんはバッチリ決めてくださいました。さすが!
「次はシャルロッテとメルヒオールか。シャルロッテの確認のために前の声を出すけど、それより年齢を上げて」
「わかりました」
シャルロッテの声を確認したら、次はメルヒオールの声を作ります。
何となくエーレンフェスト防衛戦の後の祝勝会で出ているような気がしていたので初出と思えず、何度も以前のドラマCDのキャスト欄を確認してしまいました。
長縄さんの少年声ってどんな感じだろうと思っていましたが、少年らしい声で特に問題なしです。
「お疲れさまでした」
たくさんのガヤ収録、ありがとうございました。
○田村睦心さん、小山剛志さん、豊口めぐみさん
田村睦心さんはルッツ役、小山剛志さんはギュンター役、豊口めぐみさんはジークリンデ役を演じてくださいました。
まずはジークリンデの収録から始めます。
以前の声を確認してから収録開始です。
「○ページ、もうちょっと驚きを入れてください」
ジークリンデは前編だけの出番なので、先に収録を終えて写真を撮影すると、豊口さんは帰られました。
「お疲れさまです」
ルッツとギュンターは後編だけの出番です。
二人も声を確認してから始めます。
「○ページのギュンターはもっと驚いてほしいです」
回想シーンを終えたら、エピローグです。
エピローグでは年齢が違うのでルッツには変更をお願いします。ギルの声を聞いてもらって、ある程度合わせてもらう感じですが、ドラマCDで成長しているルッツの声も何度かしていただいているので特に問題なく進みます。
あ、ギュンターの声は特に変更なし。音響監督さんが「じじいになりすぎたら困るからな」と言ったからです。それはそう。
懐かしい面々によるやり取りがルッツのナレーションで進みます。
「○ページ、修正漏れです。『ベンノの旦那』は『旦那様』に修正してください」
「×ページ、『開いた』は『ひらいた』で読んでください」
エピローグでは下町家族&プランタン商会の面々で次々と発言するキャラが変わるせいか、ギュンターは台本で次の台詞を探している内に迷子になったようで……。
「今、○ページですよ」
「おぉ」
こそっと小声でルッツがギュンターに教えている様子が微笑ましかったです。
「お疲れ様でした」
これでアフレコ2日目が終了です。
ホテルでのリモートアフレコは慣れない環境でしたが、無事に終了してホッとしました。
<アフレコ3日目>
「鈴華さん、お誕生日おめでとうございます。ちょっとズレていますが……」
「え? あ、ありがとうございます」
そんな会話をした後、収録開始です。
○星野充昭さん
星野充昭さんは前神殿長役と前アウブ・エーレンフェストを演じてくださいました。
えぇ、星野さんにも回想シーンのために来ていただきました。
アニメの声を聞いてもらって収録開始です。
「○ページ、慈悲のアクセントが違いますね」
「すみません。もっと上から目線というか、偉そうにしてください。傲慢さが欲しいです」
前神殿長が終わったら、前アウブ・エーレンフェストです。初出なので声を作るところから始めます。
「前神殿長より若い?」
「そうですね。40代前半でお願いします」
それだけの指定で声を作っていただけるんです。すごいですよね。
穏やかで抑揚が少なめの先代領主になりました。いい声です。
すんなりと声を作れたせいか、予定よりかなり早く終わりました。
「お疲れさまでした」
○上田燿司さん
上田燿司さんはアウブ・ダンケルフェルガー役、シュトラール役、漁師1を演じてくださっています。
「おはようございます!」
「悪いけど、すぐに入れる?」
「大丈夫です」
先の星野さんの収録が早々に終わっていたため、集合時間より早めに到着した上田さんは一息吐くこともできないまま、すぐにスタジオに入ることになりました。
私も台本とペンを手に取ります。
ところが、収録を始めて以前の声を確認しようとしたところ、スタジオ内に音が響いているという指摘が上田さんから入りました。
「スタジオに響いてる? 今度は何の不調だ?」
「今回は本当にマシンの調子が悪いな」
そんな声を漏らしながら調整に入る音響さん達。
私にできるのはiPadの前で応援することだけです。頑張れ。
調整が終わったら、アウブ・ダンケルフェルガーの収録です。
声を確認して、特に問題なく終わりました。
次に漁師1。
「これは若い感じでお願いします」
そんな注文に応えて、若々しい漁師の声になりました。
最後にシュトラールの収録です。
以前の声を確認してから始めます。
「あれ? 何となく前の声より若くないですか?」
「今のだとちょっと若く聞こえたから、少し年齢を上げてくれる?」
「○ページ、感情を乗せた台詞じゃなくて、もうちょっと報告っぽい感じでお願いします」
そんな感じで収録は終わり、写真撮影やサインにご協力いただきます。
「お疲れさまでした」
○井上和彦さん
井上和彦さんはジルヴェスター役を演じてくださっています。
「じゃあ、前の声を流します」
少し声の確認をしたらすぐさまテストもなく収録開始です。
「録りながらいきます」
「はい」
さすがベテラン。「ちょっと声が籠もった」などの修正があったくらいで、ささっと終了。
井上さんは本当にいつも終わるのが早いです。
○折笠富美子さん、中島愛さん、狩野翔さん、遠藤広之さん、都丸ちよさん
折笠富美子さんはエーファ役、中島愛さんはトゥーリ役、狩野翔さんはフラン役、遠藤広之さんはローデリヒ役とギャラリー男2、都丸ちよさんはデリア役とベルティルデ役を演じてくださいました。
ギャラリー男2やガヤの収録から始まりました。
「ほぅ……はもっと聞こえるように」
「何事って、もっと驚きを込めてくれる?」
「男性陣、『ふむ』とか『うむ』はもっと声を出して」
そんな感じで継承の儀式や婚約式のガヤを収録していきます。以前のガヤ収録では女性が少なかったので、今回は婚約式で華やいだ声を上げる女性陣も増していきます。
「先生、婚約式の女性陣はやりすぎですかね?」
「……うーん、面白いからいいんじゃないですか? 貴族らしく感情を抑えるとドラマCDでは全然伝わりませんし……」
媒体の違いって結構大きいですよね。以前にアニメのアフレコで「絵があるから声にそこまで演技を入れなくて良い。わざとらしくなる。もっと普通に」と監督さんが指示していましたが、「なるほど」って思うんですよね。声だけで聴くドラマCDと文字を目で追う小説では台詞回しも変更しなければ伝わりにくいです。
「ガヤは終了です。それぞれ録っていきます。……後編からで良さそうか?」
「いえ、ローデリヒが前編にいますよ。側近が返事をするところ」
「あ、ここか」
台本では台詞の上にキャラ名が書かれているのですが、そこが「ローゼマインの名捧げ側近」になっていて、注釈としてキャラ名を書かれていると個別収録の時にはどうしても忘れられがちになります。パッと見る時は台詞の上のキャラ名を探すのでどうしても目に留まり難いんですよね。
その側近達の返事しか前編にローデリヒの出番はありません。
声の確認をして「はっ!」だけを録ったら後編です。
エーファとトゥーリはアニメの声を確認し、回想シーンから収録開始です。
「○ページのエーファ、もう少し強めの口調で。神殿長に当たるように」
「×ページのトゥーリ、もっと涙声でお願いできますか?」
アニメに合わせる感じで多少の修正をお願いして回想シーンは終了です。
「フラン、ギルが先に録ってるから、それを聞いてから、そっちで号令をかけて合わせてくれる?」
「はい」
神殿の側仕えが全員集合しているシーンなので、他の方々にも手伝っていただきます。
フランの号令で声を合わせて……。
「せーの、『おかえりなさいませ、ローゼマイン様』」
フランが迎えてくれる神殿はやっぱり良いね。
それからデリアのアニメの声を確認します。デリアは第五部ⅩⅡの書き下ろし部分に出てきます。
「デリアはアニメから年齢を上げてください。15~16歳のイメージになるように」
「先生、どうですか? まだちょっと幼い?」
「そうですね。……でも、まぁ、許容範囲内です」
デリアから離れすぎると全然わからなくなりますから。
次はベルティルデの声を作ります。
ベルティルデはブリュンヒルデの妹でローゼマインの側仕え見習いですが、仕える期間が短いせいもあり、今回がドラマCD初登場です。
「先生、どうですか?」
「ちょっと年上過ぎますね。10歳なので、もっと年齢を下げてください」
可愛いベルティルデの声になりました。
「○ページ、ユー『ゼ』ライゼって言ってません? ユー『ゲ』ライゼです。他のキャラの声を聞いて、祝詞っぽくしてください」
ベルティルデが終わると、エピローグの収録です。
「次、エーファとトゥーリ。年齢を上げて。エーファは上げすぎに注意な」
「トゥーリの年齢感はルッツの声と合わせてもらったらどうですか?」
中島さんには収録済みのルッツの声を聞いてもらい、トゥーリの年齢感を揃えてもらいます。
「○ページ、悪いけど、ここはギュンターと合わせて」
「あ……え……その……んー……」
「これに合わせるんですか?」
笑っちゃうんですよね。わかります。
「○ページのトゥーリ、悲壮感がありすぎません? ルッツとテンションを合わせてもらった方がいいんじゃ?」
「×ページのエーファ、『フィ』ルディナンドって言った。『フェ』ルディナンドな」
いくつか修正してもらって終了です。
「お疲れさまでした」
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