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香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD10アフレコレポート【その4】

香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD10
アフレコレポート【その4】

【その1】【その2】【その3】【その4】

○内田雄馬さん

内田雄馬さんはハルトムート役、レスティラウト役です。

最初はレスティラウトからです。
声の確認をして収録を始めます。

レスティラウトが絵を描きたいと心情を露わにするシーンは、暴走する具合が可愛かったです。

それから、ハルトムートの収録に移ります。

「○ページ、『では』の後は周りに声をかける感じでお願いします」
「△ページ、もっとテンションを上げてください」

古代魔術の復活と「ローゼマイン様に祈りを!」では最高潮にノリノリのハルトムートにしてほしいんですよね。

「……先生、どう? ちょっとやりすぎ?」
「いえ、OKです」
「え? いいんだ?」

最高に興奮しているハルトムートが欲しかったので、やりすぎくらいでちょうど良いんですよ。実際、書籍では好き勝手にやりすぎていますからね。(笑)

「お疲れさまでした」

○子安武人さん

子安武人さんはベンノ役を演じてくださっています。

アニメの声を確認して、回想シーンの収録から始めました。
回想シーンは特に問題なし。回想はすぐに終わって、現在の時間軸です。

「ここから年齢上げて。じじいになりすぎないように注意な」
「はい」

苦笑気味に返事をする子安さん。
年齢が上がって渋みの増したベンノの声で収録が進みます。

「○ページ、『良い』は『よい』と読んでください」
「×ページ、焦った感じでお願いします」
「△ページ、もっとからかう空気にしてください」

いくつかの修正の後、音響監督さんが「ここ、ルッツと合わせるところだろ? 今ので合う?」と録音助手さんに声をかけました。
収録したベンノと先に収録していたルッツの声を合わせて流します。

「……バッチリです」

何も聞いていないのにルッツとの台詞合わせがピッタリ!
コントロールルームではどよめきが上がりました。

「お疲れさまでした」

<アフレコ4日目>

この日は脚本の國澤さんが参加されました。

「お久し振りです~!」

リモートアフレコになってから担当さんを挟んでメールでやり取りをすることはあっても、実際に顔を合わせることがなくなりました。ちょっと寂しいですね。

○石谷春貴さん

石谷春貴さんはシキコーザ役とラザファム役を演じてくださいました。

石谷さんも回想シーンのために来てくださいました。ありがとうございます。

「じゃあ、声を確認するために一度流すから……」
「……すみません。聞こえません」

コントロールルームには聞こえているけれど、スタジオ内には音が流れていないようです。

「え? スタジオに聞こえない? さっきは音、出てたよな?」
「確認しましたよ、何度も。くっそぉ……」

音響さん達が動き始めました。今回のアフレコではスタジオのマシントラブルが本当に多いですね。

「調整中に写真撮影を終わらせちゃって」

調整が終わったら収録です。
シキコーザは回想シーンに一言なので、すぐに終わりました。

次はラザファムです。
ラザファムはフェルディナンドの側近ですが、館の管理を任されていてアーレンスバッハへ行けずにお留守番だったせいもあり、ちょっと影が薄いんですよね。出番が少ないので、ドラマCDでは削られがち。
そんなラザファムにもとうとう声が!

「先生、こんな感じでどうですか?」
「OKです。柔らかい穏やかな雰囲気でとても良いですね」

声ができたら収録自体は早いです。ちょっと長めですが、台詞数は少ないので。

「お疲れさまでした」

石谷さんの収録が終わると、音響さん達の疲れた声が聞こえてきました。

「音声トラブル、起きたね」
「ホントなんでだ? あんなに確認したのに」

今回のアフレコで一番お疲れなのは音響さん達ですね。

○山下誠一郎さん

山下誠一郎さんはコルネリウス役、アナスタージウス役、ギャラリー男4を演じてくださっています。

まずはアナスタージウスです。以前の声を確認して収録開始です。

「○ページ、『其方』の後、溜めというか間が欲しいです」
「×ページ、ここはもうちょっと貴族らしく感情を抑えめにしてください」

妻にツェントの重責を負わせたくないアナスタージウスらしい声に仕上がりました。

次にギャラリー男4。
継承の儀式のギャラリーはサクッと終了。

最後にコルネリウスです。
以前の声を確認して収録を進めます。

「○ページ、ここの前半は報告している感じを出して」

マシントラブルもなく、サクサクと収録は終わりました。

○日野まりさん

日野まりさんはカミル役を演じてくださいました。

アニメでカミルをしてくださっていたので、同じように回想シーンで赤ちゃんの声の収録から開始です。

「もうちょっと長くくれる?」
「はい」

あの赤ちゃんの「あぅ」とか「だぁ」とかで長く続けるの、すごいですよね。

「じゃあ、次は成長後な。7歳くらいで」
「はい」
「先生、どうですか?」

初出のキャラは台詞を一つ読んでもらって声の確認をするのですが、カミルは以前に収録していたはずです。

「どうって……前のドラマCDのカミルと同じ声ですか?」
「前!? え? あったか?」
「エーレンフェスト防衛戦の、ダームエルにお守りを渡すシーンでカミルが喋ったはずです。えーと、ドラマCD8かな?」
「……ありました!」

録音助手さんがすぐに探してくれて、サンプル音源で以前の声を確認します。

「さっきより声が高いですね」
「こっちに合わせてくれる?」

声の確認をして収録です。
こましゃくれたカミルの言い方に微笑ましくなりました。

「○ページ、皆が安堵の息を吐いているところ。カミルだけは『あ?』とか『え?』みたいに一人だけ状況がわかってない感じで」
「×ページ、最後はもっと言葉を濁す感じでお願いします」

……あぁ、カミル。大きくなって。

回想とエピローグで一番成長を感じるキャラですよね。生まれた時、洗礼式、このエピローグを書いていると、親戚のおばちゃん目線になってしまいます。

「お疲れさまでした」

次の方が到着するまでの休憩中。
アドベントカレンダーについて國澤さんや担当さん達が会話している声が聞こえてきました。

「すごいですよね、あのアドベントカレンダー。全部絵が違うんでしょ?」
「それを準備するの、大変だったでしょうね」
「香月先生の提案ですよ」

クッキーはキャライラストではなく紋章にする案もあったのですが、せっかくならば色々なキャラを入れたいと思ったんですよね。個人的には今までグッズにならなかったキャラを入れられて楽しかったです。
クッキーは可愛すぎてちょっと食べにくいなと思いますが……。

○井口裕香さん、速水奨さん(後編)

後編では井口裕香さんがローゼマイン役、速水奨さんがフェルディナンド役です。

今回は後編だけですが、二人は本当に台詞数が多いです。ローゼマインは224、フェルディナンドは96。私は「頑張ってください」とiPadの向こうから応援だけします。

先日、前編を収録したところなので声の確認もなく始まりました。

「國澤さん、タイトルが2カ所あるけど、どっちが正解?」

音響監督さんの声に急いで台本を見直す音がします。

「え? 2カ所ありますか? どこでしょう?」
「最初と2ページ目」
「え? 最初? ……あ、最初の方、目に入っていませんでした。2ページ目でお願いします」

タイトル位置を確認したら井口さんから質問がありました。

「今回、台詞の中に“わたし”と“わたくし”が混在しているところがあるのですが……」
「えーと、そこは非常に感情的になっているところなので、このままでお願いします。
書籍の原稿に合わせたので、そのまま読んでください」
「わかりました」

そう、校正さんからも指摘されてweb版からはいくつか「わたし」を「わたくし」に修正したのですが、どうしても変えたくなかったところはそのまま「わたし」で進めています。ドラマCDも書籍に合わせて修正しました。

「○ページ、『光景』を『景色』と言いませんでした?」
「×ページ、『避けられた』は『よけられた』ではなく『さけられた』でお願いします」
「△ページ、ここはもっと涙声にしてください。小説でもコミックスでも号泣しているシーンなので」
「○ページ、『後』は『のち』ではなく『あと』と読んでください」
「×ページ、もっと聴衆を煽る感じが欲しいです。宣言に力強さをください」

そうして修正していく中、音響監督さんからの質問が。

「先生、ここの一同『神に祈りを!』はローゼマインとフェルディナンドも入れるの?」
「あ、入れてください」

二人にも声を揃えて神に祈っていただきました。

「休憩入れる?」
「いえ、大丈夫です」

台詞数が多い上に、大勢ではなく二人の収録になるとマイクの前で喋りっぱなしです。
途中で休憩を入れるかどうか質問がありましたが、そのまま進めることになりました。

「○ページ、間違っているわけではないのですが、耳で聴くとわかりにくいので『フェルディナンド様の移動時に』を『フェルディナンド様が移動する時に』に修正してください」
「×ページ、急に幼くなったように聞こえました」
「△ページ、ここはアクションもつけて」
「○ページ、『好きじゃないみたい』じゃなくて『好きみたいじゃない』な。意味が逆になる」
「×ページ、引っ張る感じも入れて」
「△ページ、『港』は『ちまた』じゃなくて『みなと』でお願いします」

どんどん録り進めて、エピローグはローゼマインの台詞で終わりです。

「これで終わりか? 忘れてること、ないよな?」
「大丈夫。終わりです」
「よし! 終了です。お疲れさまでした!」

収録時間が長かったこと、この日の最後の収録だったこと、それに、『本好きの下剋上』のドラマCDのラストだったことで、「お疲れさまでした」という言葉に一番力が籠もりましたし、「終わった」という解放感に包まれました。

「ハァ、これで本好きのドラマCDは終わりですね」
「朗読イベントなどもあるので、全然終わった気がしませんが……」
「井口さんはオーディオブックもあるから尚更だよね」

そんなスタッフさん達の声が聞こえますが、何はともあれ『本好きの下剋上』ドラマCDのアフレコはこれで終了です。
最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

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