立教大学文学部キリスト教学科卒業。主な参加作品は連続テレビドラマ『でたらめヒーロー』、短篇小説集『99のなみだ』シリーズ、『涙猫』。『神様刑事 ~警視庁犯罪被害者ケア係・神野現人の横暴~』で本格的な長編小説デビューを飾る。その後、様々なメディアで脚本執筆をするなど、活躍の幅を広げている。財団法人メンタルケア協会認定メンタルケア・スペシャリスト。
編集長 実は一緒に飲みながら、ゆっくり話すのは初めてですねぇ。
関口 電話で長時間話しているので、そんな気がしないですね。
編集長 二人の電話は長い(笑)。恋人ともあんなに話すことないです。
関口 (笑)
編集長 今日は6月に『神様刑事』シリーズの新刊が発売になるということで、そのお話を伺わせて下さい。「神様を刑事に」「死者を復活させる捜査」等、斬新な設定が多いですが、そもそも、着想はどんなところから得たんですか?
関口 僕もうろ覚えなんですよね(苦笑)
編集長 何か一緒に企画をやろうとご相談した時、最初に提案頂いた段階から、もう本作の原型がありましたよね?
関口 そうですね。実はある別の企画をやるお話があった時に、企画書としてまとめていたんです。ただ、そこには紆余曲折がありまして……。最初は、これもまた別の企画なんですが、「犯罪被害者ケア係と刑事が事件を捜査する」という小説でした。その時に「犯罪被害者」のことを結構調べました。そしたら、「これは書けないわ」って思っちゃったんです。というのも、やっぱり犯罪被害者遺族の方の体験って、ものすごく重くて……当時は生半可な気持ちで扱っちゃいけない気になって中止しました。
また、ノンフィクションに比べて、この題材をフィクションにする意味も見い出せなかったんです。ですので、それからずっと、このアイデアは宙に浮いた状態でした。
編集長 どれくらい棚上げ状態だったんですか?
関口 3年くらいかなぁ? ただ、その時に読んだ資料の衝撃が大きすぎたので、頭の片隅にはずっと「書きたい」想いがありました。なので、ことあるごとに、そういった関連の本を読んだり、講演会に行ったり、個人的に続けてたんです。
編集長 まるで石の一点に滴を落とし続けるように。
関口 そうですね。
編集長 そうしたら、ある日、石に穴が開いた。
関口 で、何かの刑事ドラマを見ていた時にひらめいたんです。最後の2分間くらいに、よく刑事部屋とかで、刑事同士が事件を解決できて良かったみたいな会話とかをするじゃないですか? それを見てて、「待てよ、あんたたちは解決して良かったってなってるけど、被害者死んだままだよね?」って気づきました。その被害者の周りには残された人たちがいるじゃないかって。
きっと、他にもいろいろあったんですけど、そこから積み重ねたことが繋がってきて、まとまった感じでしょうか。
編集長 だからこそ、「死者の復活捜査」という、本作で最も重要な設定が生まれたんですね。
一緒に企画を詰めている時に、関口さんが言っていた言葉をとてもよく覚えているんです。「この作品は人が死なない作品なんだ」って。そこだけはずっとブレなかったです。
関口 遺族の話を扱う以上、下手にやれないってことだけはあったので、そこは大事でした。
あと、ノンフィクションでそういう話の本があったとしても、あまり多くの方が手に取ろうとはしないですよね? 本当は読むべきだし、みんなが知るべきことなんですが、なかなか敷居が高い。その時に、やっぱりエンターテインメントだからこそ、できることがある。入口を入りやすくすれば、きっとその現実を知って頂ける方が増えるはずだと考えました。
犯罪被害者遺族のための集会に何度か参加してみた時に、来てる人たちは当然、当事者や関係者の方たちが多かったんです。でも、そのイベントの趣旨は本当は、社会にあるこの現実を知ってもらうためなんです。そこでも本当に知るべき人たちに届けたい、伝えたいという想いを強くしました。
編集長 その間口を広げる役割として、やっぱり主人公の神野は大きいですね。あれだけ暴言吐くわ、態度悪いわと、相当に極端なキャラクター像ですよね。
関口 「生き返らせる人物」なんだから、「神様」だろうと連想しつつ、性格としては二通りに悩みました。今の傲慢な奴と良い人のどちらにするか。本当は良い奴にしたほうが良かったと思う瞬間も少しありますが(笑)
編集長 僕は今の神野のキャラクターに惚れたんです。だからこそ、最初にキャラクター設定を見せて頂いた後で、「もっと悪くしてくれ」って掘り下げるお願いをしたくらいですよね。
関口 ファミレスで打ち合わせしていた時に、僕が「神野ならここで何を注文しますか?」って聞いたら、柴田さんに「パフェ食べる」って言われた時に、スカっ!と見えたのを覚えてます(笑)。
編集長 そんなこと言ったかなぁ(笑)。
関口 あの時はまだ、僕の中で神野が少しボケてたんです。でも、柴田さんが神野にとても食いついてくださって。
編集長 そうだ! あの時、神野のことだけを4時間くらい語り合ったんだ。僕は関口さんが作った神野の原型が大好きで仕方なかったから、勝手に盛り上がってたんです。こんんな奴に違いないって。だから、「なんで、関口さんはもっと神野のことを見えないんだよ!」ってイライラしてました(笑)。
関口 そうそう。で、「パフェ」です。
編集長 「パフェ」きっかけ(笑)。
関口 あそこで、はっきりしました。
編集長 確かに6月に発売される2巻『神野現人の暴走』では、より神野が明確になっていて、全く関口さんの中で迷いがないのを感じました。確実に神野が生きています。
関口 長時間触れ合ってきて、どんどん好きになってます。
編集長 この作品って、関口さんにとって実質的な小説デビュー作ですよね。何か想いはありましたか?
関口 一つはちゃんと形になって良かったなということですね。今までにも色々なお仕事をさせて頂いてきましたが、長編で一冊を出すのは初めてでしたから、大きな到達点でした。
それまでは嫌になるくらい、途中で企画中止になるケースが多くあったんです。
編集長 そんなに、たくさん?
関口 えぇ。企画を詰めて、脚本の執筆も終えた映像企画で、撮影まで終わってから、ぽしゃったケースとか……。なので、今回も書店で実際に本を手に取るまでは信じられなかったです(苦笑)。
編集長 すごいなぁ。僕はこの企画が途中で中止になるなんて微塵も考えなかったですよ。「こんだけ時間割いて、こんだけ面白いんだから」って。ですが、多分、関口さんのためじゃない(笑)。ただ、読者に読んで欲しかったから。
関口 (笑)。確かに僕の中でも、今までやってきた企画の中でも、『神様刑事』は自分の中で「会心の一撃感」がありましたね。
編集長 あぁ、それも言ってましたね、本作への熱い想いを何度も聞いた気がします。面倒くせーて思うくらい(笑)
関口 (苦笑)
編集長 こっちがリテイクを出しても、「そこが企画の肝なんです!」って絶対に譲らない箇所がありました。後から考えれば、こっちが間違ってたんで、結果的に関口さんの言うことを聞いて良かったって思うんですが、その時は「うるせぇーなぁ、こいつ、そんなに言うならいいや」って諦めてました(笑)。
関口 あれ、僕の人生でもベスト3に入る、食い下がりでした(笑)。
編集長 やっぱり、2巻『神野現人の暴走』を読んで、本作の面白みがしっくり来た気がします。「死者の復活捜査」を前提にした物語で始まっているので、よりクリアになっています。関口さんが何を大事にしているのかが、ようやく腑に落ちました。
編集長 いよいよ、2巻『『神野現人の暴走』が発売になります。
関口 まだ、完成するまで不安です……。
編集長 もう、情報解禁も済んでいるので、ここで出なかったら、うちが関係各所に怒られる事故ですよ! 1巻『神野現人の横暴』を越える完成度になってますし、安心して下さい。それに、営業に了解を得たので、3巻もやりましょう。もう、売れなくてもやります(笑)。
関口 ありがたいことです。
編集長 次は連作短編でお願いします。もう、新刊の帯にも続刊決定と書いちゃいます。
関口 時期も?
編集長 2015年秋って。
関口 秋……。
編集長 がんばりましょう!
関口 怖いけど、なるべく早くがんばります。
編集長 それでは最後に応援下さる読者の方に一言をお願いします。
関口 本当に読んでくださってありがとうございます。やっぱり、喜んでもらいたくて書いてるので、今後も楽しんで頂けるようがんばっていきます。今後もどうぞ宜しくお願いします。
編集長 本日はありがとうございました。
(2015年4月末/都内某居酒屋にて)
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